タイサンボク(読み)たいさんぼく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイサンボク」の意味・わかりやすい解説

タイサンボク
たいさんぼく / 大盞木
泰山木
大山木
[学] Magnolia grandiflora L.

モクレン科(APG分類:モクレン科)の常緑高木。大きいものは高さ20メートル以上になる。樹皮は暗褐色小枝は太く、大きな葉を密につける。葉は互生し、長楕円(ちょうだえん)形または長倒卵形で長さ10~20センチメートル、縁(へり)に鋸歯(きょし)はなく革質厚い。葉表は濃緑色で光沢があり、葉裏は鉄さび色の軟毛を密生する。5~6月、枝先にホオノキの花に似た、洋杯形で大きな白色花を開く。花径10~15センチメートル、芳香がある。花弁は6枚、ときに9~12枚、広倒卵形でやや厚くて大きい。萼片(がくへん)は花弁状で3枚。本種は被子植物のなかでは原始的といわれるもので、花の中心の花軸上に多数の雌しべがつき、雄しべも多数あり、円錐(えんすい)状になる。各雌しべは小さな袋果となり、それらが集まって楕円形の集果となる。集果には短毛があり、11月ころ熟すと袋果の一方が裂け、白糸につながった赤い種子を垂れ下げる。北アメリカ南部原産で、日本には明治初年に渡来した。変種ホソバタイサンボクvar. lanceolata Ait.は葉裏に褐色の毛が少ないもので、日本にも植えられている。近縁ヒメタイサンボクM. virginiana L.は北アメリカ南部原産の小高木で、葉は薄くて裏面は白色を帯び、やや多湿地を好む。本種は広い庭園、公園などに植栽される。普通の適潤地でよく育つが、移植にはやや弱く、剪定(せんてい)にも弱い。繁殖は接木(つぎき)、実生(みしょう)による。

[小林義雄 2018年8月21日]


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改訂新版 世界大百科事典 「タイサンボク」の意味・わかりやすい解説

タイサンボク (泰山木)
evergreen magnolia
bull bay
Magnolia grandiflora L.

庭園樹や街路樹として世界中で植えられているモクレン科の常緑高木。整形樹で40mに達する。葉は長楕円形で長さ10~25cm。厚く革質で下面は褐色の圧軟毛が密布する。晩春から初夏に咲く花は乳白色で大きく,直径15~20cm,芳香を放つ。心皮には黄白色の軟毛が密生する。北アメリカ南東部原産。常緑のモクレン属中で最も北に分布し耐寒性が強いため,冷温帯地域でも容易に栽培できる。日本では主に庭園樹として用いられ,洋種であるにもかかわらずハクモクレン同様,寺院にも植えられている。欧米では街路樹としてもよく使われる。繁殖は実生または接木。実生から育てたものにはさまざまな形の葉がみられ,それぞれに園芸品種名がつけられている。アメリカ等でマグノリアの香水として売られているものは,本種の花の香を人工合成したものである。材は家具等に使用される。樹皮からは刺激剤が作られる。日本で時に栽培される常緑のモクレン属のものとしてトキワレンゲM.cocoとヒメタイサンボクM.virginianaとがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タイサンボク」の意味・わかりやすい解説

タイサンボク(泰山木)
タイサンボク
Magnolia grandiflora; bull bay

モクレン科の常緑高木。北アメリカ南部の原産で,日本には明治初期に伝えられ,公園や庭によく植えられている。樹高 30mに達し,枝は太く樹形が美しい。樹皮は淡褐色で薄く,鱗状にはげる。葉は互生し,厚く大型の長楕円形全縁で表面に光沢があり,裏面には赤褐色の毛が密生する。初夏に,枝の先端に直径 15~20cmもの大型の白色花をつける。花は強い芳香を放ち,3枚の萼片が花弁状になり,さらに,普通6枚ある花弁は倒卵形で厚い。おしべは多数で花糸が紫色。果実は長さ 8cmほどの楕円体で緑白色の短毛におおわれ晩秋に熟する。成熟後心皮が開裂し赤色の種子を放出する。アメリカではこの葉をクリスマスの装飾に用いる。

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百科事典マイペディア 「タイサンボク」の意味・わかりやすい解説

タイサンボク

北米原産のモクレン科の常緑高木。日本には明治初年に渡来,庭などに植えられる。葉は大きく長楕円形で革質,裏面には褐色の毛が密生。5〜6月,枝先に強い香気のある白色花を開く。花は径15〜20cm,花被片はふつう9枚あって内部のものはやや小さい。おしべ,めしべともに多数。果実は9〜10月に熟し,裂けて赤い種子を出す。

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