日本大百科全書(ニッポニカ) 「モクレン科」の意味・わかりやすい解説
モクレン科
もくれんか
[学] Magnoliaceae
双子葉植物、離弁花類。常緑または落葉の高木ときに低木。葉は互生し、全縁であるが、ユリノキ属のみ分裂する。顕著な托葉(たくよう)があり、帽子状となって若い葉と茎頂を保護する。花は頂生または腋生(えきせい)し、大形で単生する。花弁、雄しべ、雌しべは離生し、長い花托上に螺旋(らせん)状に配列する。このような花の構成は、被子植物のうちでもっとも原始的とされる。ただし、萼片(がくへん)は三枚、まれに四枚で、輪生する。胚珠(はいしゅ)は2~20個。アジア東部から南部、南北アメリカの熱帯から温帯に約15属230種分布し、ユリノキ属のみからなるユリノキ連と、ほかの全属を含むモクレン連とに分類される。
日本にはモクレン属と、オガタマノキ属が分布する(APG分類ではすべてモクレン属とされる)。各属の花は互いにたいへんよく似るが、果実の裂開法等により区別される。ユリノキ属では翼果で裂開しないが、モクレン連では裂開し、赤い外種皮をもつ種子が白い糸で果托からぶら下がる。花は一般に大形で芳香があり、華麗なため、世界中で花木として重用され、おもなものにタイサンボク、シモクレン、ハクモクレン、コブシ、キンコウボク、ユリノキなどがある。欧米ではツバキ類、ツツジ類とともに、三大花木として珍重される。
同じモクレン目のバンレイシ科やクスノキ科などと同様、植物体に精油を含み、香料として利用したり、漢方薬にする。材は柔らかくて狂いが少なく、建築や家具調度品などに幅広く使われる。
APG分類ではモクレン目モクレン科とされる。モクレン目にはその他、ニクズク科とバンレイシ科が含まれる。
[植田邦彦 2018年8月21日]