改訂新版 世界大百科事典 「シロクローバー」の意味・わかりやすい解説
シロクローバー
white clover
Trifolium repens L.
牧草や芝草として利用されるマメ科の多年草。シロツメクサ(白詰草)ともいう。また単にクローバーと呼ぶ場合は,この種をさすことが多い。ヨーロッパからアジアにかけての温暖な地域の原産で,現在では亜熱帯から亜寒帯までの世界各地で広く栽培され,野生化もしている。日本に渡来したのは江戸時代で,当時,オランダから長崎に輸入されていたガラス製品の梱包(こんぽう)充てん材としてクローバーの乾草が使われていた。このためにクローバー全体に〈詰め草〉の名が与えられた。明治以降あらためて牧草として導入され,現在では日本各地に帰化している。茎は地をはって長く伸び,葉のつけね付近から根を出す。複葉は互生し,5~20cmの葉柄の先に卵形または心臓形の小葉が3枚つく。春から夏に葉腋(ようえき)から10~30cmの花柄が伸び立ち,先端に10~80個の白色の小花が球状に集まって咲く。花色が淡紅色の系統もある。果実(莢(さや))は,褐変した花の中で発達し,一つの莢に2~4個の褐色の種子ができる。シロクローバーは形態,性状ともに変異に富み,野生型,中間型,ラジノ型に大別される。ラジノ型はラジノクローバーとして別途に取り扱われることが多い。これは19世紀末に北イタリアで発見され,生育が早く,大きさも野生型のシロクローバーの2~4倍となる。一般に茎葉はタンパク質含量が多く,飼料としての価値が高い。とくにラジノクローバーは収量も高く,青刈りして生食させるにも,乾草およびサイレージ用としても利用価値がすぐれる。野生型や中間型は主として放牧地の牧草として,イネ科牧草と混播(こんぱん)して利用する。また,芝草や果樹園の下草,道路の法面(のりめん)などの保護,土壌改良などにも用いられる。
→クローバー
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報