クローバー(読み)くろーばー(英語表記)Alfred Louis Kroeber

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クローバー」の意味・わかりやすい解説

クローバー(Alfred Louis Kroeber)
くろーばー
Alfred Louis Kroeber
(1876―1960)

アメリカの文化人類学者。コロンビア大学で初めは文学を専攻していたが、ボアズのもとで人類学を学び、1901年から1946年まで、新たに設けられたカリフォルニア大学の学部と人類学博物館において、多方面にわたる調査と研究に従事した。おもに民族誌、民族学、言語学、考古学の分野で重要な業績を残すとともに、ユニークな歴史と文化の巨視的理論を展開した。引退後も多数の大学で客員教授を務め、国際的な学会活動も盛んに行った。公刊の論文は500以上もあり、ほとんどは専門的内容のものである。『人類学』(1923)は当時では唯一の教科書として広範に利用された。『カリフォルニアのインディアン・ハンドブック』(1925)は、自分は本来は民族(誌)学者と考えていたクローバーの代表的な研究成果であり、文化領域の概念を用いて記述されている。「超有機体」(1917)は小論文ながら、文化は文化から理解されるべきだとするクローバーの文化論をよく示すものであるが、学界内外にさまざまの論議を引き起こした。のちに『文化成長の諸形相』(1944)では文化の成長パターンが追求された。学史上の意義を認められている『親族関係の類別的体系』(1909)では、言語学的、心理学的要因の作用が強調され、機能主義的な社会組織の分析に批判的な立場がとられている。生涯を通じて強い博物学的な関心を持ち続け、学識の豊かさは驚くばかりであり、つねに柔軟な見方をとろうとする控えめで内省的な人柄であった。妻のシオドーラTheodora Kroeber(1897―1979)も文化人類学者で、共同の研究成果をもとに『イシ』を著している。娘は『ゲド戦記』シリーズで著名な小説家ル・グイン

[小川正恭 2018年11月19日]

『A・L・クローバー著、松園万亀雄訳『文明の歴史像――人類学者の視点』(1971・社会思想社)』『Theodora KroeberAlfred Kroeber : A Personal Configuration (1970, University of California Press, Berkley)』


クローバー(マメ科)
くろーばー
clover
[学] Trifolium

マメ科(APG分類:マメ科)の多年草または一年草。和名ツメクサ(詰草)。シャジクソウ属の総称で、3小葉からなる複葉をもつのが特徴。葉は互生し、長い柄があり、その付け根から花茎を出す。花は小さな蝶形花(ちょうけいか)で、多数が球状に集まって開く。茎葉は栄養価が高く牧草として利用され、とくに根につく根粒菌は空気中の窒素を固定し土地を肥やすので、休耕畑などにも植えられる。おもなものにシロクローバー(シロツメクサ)、アカクローバー(ムラサキツメクサまたはアカツメクサ)、アルサイククローバー(タチオランダゲンゲ)、ストロベリークローバー(ツメクサダマシ)などがあるが、代表種はシロクローバーである。

[星川清親 2019年10月18日]

文化史

クローバーの語源は、ローマ神話の英雄ヘルクレス(ギリシア名ヘラクレス)が持っていたという三つのこぶのある棍棒(こんぼう)に由来する。つまり、クローバーの葉形がその棍棒の形と似ていたので、ラテン語で棍棒を意味するクラバclavaがクラブclubに転訛(てんか)し、さらにクローバーと変化した。トランプ札のクローバーの葉形をしたマークがクラブとよばれるのは、そのいきさつを物語る。

 クローバーはアイルランドの国花であるが、これは、その均整のとれた3枚の小葉をカトリックの宗義の三位(さんみ)一体のシンボルと結び付けたからである。またヨーロッパでは、葉が荷造り用の詰め物に使われた。日本への渡来も、1846年(弘化3)、オランダから幕府に贈られたガラス製の花瓶や照明器具などの梱包(こんぽう)にされたクローバーの詰め物から種子が採種、播種(はしゅ)されて広がった。ツメクサの名は「詰め物の草」に基づく。その後、明治の初めに北海道へ牧草として本格的に導入された。アメリカのバーモント州の州花である。

[湯浅浩史 2019年10月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クローバー」の意味・わかりやすい解説

クローバー
Kroeber, Alfred Louis

[生]1876.6.11. ニュージャージー,ホーボーケン
[没]1960.10.5. パリ
アメリカの文化人類学者。カリフォルニアインディアンの宗教儀礼の研究が有名。 1901~46年,カリフォルニア大学人類学教授。退職後は,シカゴ大学,コロンビア大学,エール大学などで教鞭をとった。彼は文化現象を有機体とは別個の領域に属するものとし,その類型の発見に努め,アメリカ人類学における歴史主義の基礎をつくった (→文化決定論 ) 。主著『人類学』 Anthropology (1923) ,『カリフォルニアのインディアン』 Handbook of Indians of California (25) ,『文化の性質』 The Nature of Culture (52) など。

クローバー

「シロツメクサ(白詰草)」のページをご覧ください。

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