翻訳|clover
マメ科,シャジクソウ属Trifoliumの多年草または一年草の総称。江戸時代,オランダから医療器具などを輸入した際,荷詰め用として日本に渡来したところからツメクサの名がある。葉は3枚の小葉からなる複葉で,葉柄は長く,茎に互生する。葉腋(ようえき)から花茎を伸ばし,多数の小さな蝶形花が球状に群がって咲く。花後,花弁や萼が実を包み,莢(さや)は目だたない。茎葉はみずみずしく栄養に富み,牧草として利用され,よくイネ科牧草と混播(こんぱん)される。また,根粒菌により空中の窒素を固定し土地を肥やすので,休耕畑などにも植えられる。おもなものにシロクローバー(シロツメクサともいう),アカクローバー(アカツメクサ,ムラサキツメクサともいう),アルサイククローバーT.hybridum L.(英名alsike clover。タチオランダゲンゲともいう),ストロベリークローバーT.fragiferum L.(英名strawberry clover。ツメクサダマシともいう),クリムソンクローバーT.incarnatum L.(英名crimson clover。ベニバナツメクサともいう),サブクローバーなどがある。
これらの中でも,とくにシロクローバーをクローバーと呼ぶことが多い。シロクローバーの原産地は,ヨーロッパからアジアにかけての温暖な地域とされ,今日では世界中に広く分布している。日本には江戸時代に渡来し,明治以降も牧草用などにいくつかの品種が導入され,現在では各地に野生化している。数十の小花が頭状に集まり,白色,まれに淡紅色。四倍体の変種に,草丈高く大型のラジノクローバーがある。イタリア北部のラジノ地方で古くから利用されていたもので,牧草としての価値が高い。
欧米では四つ葉のクローバーは幸運を招くものとされるが,この場合のクローバーには,近緑のウマゴヤシ属Medicagoの種も含まれることが多い。いずれにせよ,小葉3枚の複葉が基本型で,四つ葉は奇形である。なお,シロクローバーで葉がしばしば4小葉になり,赤紫色をおびるものはクロバツメクサT.repens L.var.nigricansと呼ばれ観賞用に栽植される。
執筆者:星川 清親 シャジクソウ属で日本に自生するのはシャジクソウT.lupinaster L.(英名bastard lupine)1種のみである。多年草で,茎は叢生(そうせい)して高さ20~50cm。葉は掌状複葉で3~5または7小葉がある。花期は夏,茎の頂部の葉腋から出た花茎に,淡紅紫色の花を10~20個かたまってつける。本州中部の陽地草原に分布し,ヨーロッパからシベリア,さらにアラスカまで広く分布している。
執筆者:堀田 満
クローバーはキリスト教の三位一体の象徴であり,さらにはアイルランドの象徴である。クローバーの学名Trifoliumが〈三つの葉〉を意味していることからもわかるように,クローバーは3枚の葉をもつのが通常である。伝説によればアイルランドの守護聖人パトリックは433年にキリスト教の最初の布教者としてアイルランドに渡り,三位一体の難しい教義をクローバーをたとえに使って説いた。すなわち彼はクローバーを人々の前に示し,父と子と聖霊が三にして一であるのは,このクローバーが3枚の葉をもちながら1本の柄に連なっているのと同じだと説いたのである。四つ葉のクローバーは珍しいことと,マルタ十字の形に似ていることから,幸運や幸福のしるしとされる。また5枚葉以上のクローバーも同様であって,五つ葉は金銭上の幸運を,六つ葉は地位・名声を手に入れる幸運を,七つ葉は九死に一生を得るといった最大の幸運を意味する。
執筆者:山下 正男
アメリカの文化人類学者。ニューヨークのドイツ系上層社会に生まれる。コロンビア大学で修辞学と文学の助手をつとめていたが,F.ボアズの講義を聞いて人類学に転進した。1901年カリフォルニア大学に教職を得てからは,カリフォルニア・インディアン,ニューメキシコのズーニー族の調査およびメキシコやペルーの考古学発掘にとり組んだ。文化の全体的俯瞰にすぐれた能力をもつ経験主義者として民族学資料の収集と分類につとめ,文化型の発見を目ざした。民族気質や心理学的説明を重視する文化論には同調せず,文化は文化から説明すべきだという立場を堅持し,《超有機体》(1917)論を発表して反響を呼んだ。主著としては自然人類学と文化人類学の統合を試みた大著《人類学》(1948)がある。
執筆者:松園 万亀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アメリカの文化人類学者。コロンビア大学で初めは文学を専攻していたが、ボアズのもとで人類学を学び、1901年から1946年まで、新たに設けられたカリフォルニア大学の学部と人類学博物館において、多方面にわたる調査と研究に従事した。おもに民族誌、民族学、言語学、考古学の分野で重要な業績を残すとともに、ユニークな歴史と文化の巨視的理論を展開した。引退後も多数の大学で客員教授を務め、国際的な学会活動も盛んに行った。公刊の論文は500以上もあり、ほとんどは専門的内容のものである。『人類学』(1923)は当時では唯一の教科書として広範に利用された。『カリフォルニアのインディアン・ハンドブック』(1925)は、自分は本来は民族(誌)学者と考えていたクローバーの代表的な研究成果であり、文化領域の概念を用いて記述されている。「超有機体」(1917)は小論文ながら、文化は文化から理解されるべきだとするクローバーの文化論をよく示すものであるが、学界内外にさまざまの論議を引き起こした。のちに『文化成長の諸形相』(1944)では文化の成長パターンが追求された。学史上の意義を認められている『親族関係の類別的体系』(1909)では、言語学的、心理学的要因の作用が強調され、機能主義的な社会組織の分析に批判的な立場がとられている。生涯を通じて強い博物学的な関心を持ち続け、学識の豊かさは驚くばかりであり、つねに柔軟な見方をとろうとする控えめで内省的な人柄であった。妻のシオドーラTheodora Kroeber(1897―1979)も文化人類学者で、共同の研究成果をもとに『イシ』を著している。娘は『ゲド戦記』シリーズで著名な小説家ル・グイン。
[小川正恭 2018年11月19日]
『A・L・クローバー著、松園万亀雄訳『文明の歴史像――人類学者の視点』(1971・社会思想社)』▽『Theodora KroeberAlfred Kroeber : A Personal Configuration (1970, University of California Press, Berkley)』
マメ科(APG分類:マメ科)の多年草または一年草。和名ツメクサ(詰草)。シャジクソウ属の総称で、3小葉からなる複葉をもつのが特徴。葉は互生し、長い柄があり、その付け根から花茎を出す。花は小さな蝶形花(ちょうけいか)で、多数が球状に集まって開く。茎葉は栄養価が高く牧草として利用され、とくに根につく根粒菌は空気中の窒素を固定し土地を肥やすので、休耕畑などにも植えられる。おもなものにシロクローバー(シロツメクサ)、アカクローバー(ムラサキツメクサまたはアカツメクサ)、アルサイククローバー(タチオランダゲンゲ)、ストロベリークローバー(ツメクサダマシ)などがあるが、代表種はシロクローバーである。
[星川清親 2019年10月18日]
クローバーの語源は、ローマ神話の英雄ヘルクレス(ギリシア名ヘラクレス)が持っていたという三つのこぶのある棍棒(こんぼう)に由来する。つまり、クローバーの葉形がその棍棒の形と似ていたので、ラテン語で棍棒を意味するクラバclavaがクラブclubに転訛(てんか)し、さらにクローバーと変化した。トランプ札のクローバーの葉形をしたマークがクラブとよばれるのは、そのいきさつを物語る。
クローバーはアイルランドの国花であるが、これは、その均整のとれた3枚の小葉をカトリックの宗義の三位(さんみ)一体のシンボルと結び付けたからである。またヨーロッパでは、葉が荷造り用の詰め物に使われた。日本への渡来も、1846年(弘化3)、オランダから幕府に贈られたガラス製の花瓶や照明器具などの梱包(こんぽう)にされたクローバーの詰め物から種子が採種、播種(はしゅ)されて広がった。ツメクサの名は「詰め物の草」に基づく。その後、明治の初めに北海道へ牧草として本格的に導入された。アメリカのバーモント州の州花である。
[湯浅浩史 2019年10月18日]
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「シロツメクサ(白詰草)」のページをご覧ください。
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【北アメリカの文化領域】
複雑な新大陸の自然環境に適応し,発展段階の異なる新大陸の原住民文化を分類・記述する一方法が文化領域の概念である。C.T.メーソンの民族環境,C.ウィスラーの食糧資源に基づく文化領域,A.L.クローバーの植生と文化要素の分布に基づく文化領域などの諸概念を修正したもので,生業活動などの文化要素の分布を基盤とし,文化発展をも考慮して,エスキモーとアレウト族も含めた次の9文化領域が一般的に用いられている。
[極北文化領域]
西はアレウト列島,ベーリング海峡周辺から,カナダ北東部のラブラドル,グリーンランドにいたる極北のツンドラ地域をいう。…
…モーガンの進化図式はその後厳しい批判にさらされることになったが,親族名称の科学的研究の基礎を築いたことは高く評価されている。
[親族名称の諸類型]
A.L.クローバーは親族名称が第1に言語形式であること,類別的名称と記述的名称の区別は意味のないことを指摘し,親族関係者分類の論理的基盤として以下の分類基準を列挙した。(1)同一世代と異世代の区別。…
…シロツメクサ(白詰草)ともいう。また単にクローバーと呼ぶ場合は,この種をさすことが多い。ヨーロッパからアジアにかけての温暖な地域の原産で,現在では亜熱帯から亜寒帯までの世界各地で広く栽培され,野生化もしている。…
…豆類を産出するマメ科植物は窒素固定を行う根粒菌の共生による根粒を有している。そのため土壌中の窒素分が少ないやせた土地でもよく生育するものも多く,シロクローバー(シロツメクサ),アカクローバー(アカツメクサ),ウマゴヤシなど草本性の種では,牧草として広く利用されるものが多い。マメ科の牧草は土地を肥沃にするだけでなく,タンパク質やアミノ酸の含有量も高いため良好な家畜飼料になる。…
…なぜなら,19世紀の中ごろまで,肥料は家畜の糞尿(ふんによう)であったから,家畜頭数の増加が農業生産力の発展と密接に結びついていたのである。まず,夏作物のオオムギといっしょに牧草(おもにクローバー)が混播(こんぱん)され,オオムギが刈り取られたあとはクローバー畑となる。そして,その翌年も休閑せずにそのままクローバー畑として利用された。…
※「クローバー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
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10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
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