土壌改良(読み)どじょうかいりょう(その他表記)soil amelioration

改訂新版 世界大百科事典 「土壌改良」の意味・わかりやすい解説

土壌改良 (どじょうかいりょう)
soil amelioration

土壌の物理的・化学的あるいは生物的な諸条件を改良して土壌の肥沃性を高め,農業の生産性を向上させること。物理的条件の改良とは,土壌の団粒化による透水性・通気性の改善,漏水田の保水性の向上など,化学的条件の改良とは,土壌の酸性矯正,特殊成分の補充,有害物質の不活性化や除去など,生物的条件の改良とは土壌生物の活動の制御などである。土壌改良の目的で投入される各種資材を〈土壌改良資材〉といい,堆厩肥(たいきゆうひ),わらや客土材料としての各種土壌など農家が自給できるもの,有機性廃棄物である汚泥石灰質肥料,溶成リン肥などの土壌改良効果を示す肥料ベントナイトなどがある。

 日本の全耕地面積の約40%は改良を必要とする不良土である。そのおもな土壌と改良法および肥培管理法は以下のとおりである。(1)老朽化水田 客土,深耕,各種改良資材の施用,無硫酸根肥料の利用,灌漑排水の合理的な管理。(2)漏水田 床締め,客土,ベントナイト施用などによる透水性の改良。(3)湿田 排水による乾田化。(4)重粘性土壌 暗きょ排水,客土,心土破砕。(5)酸性土壌 石灰資材施用,特殊成分の補充。(6)火山灰土壌 酸性矯正,有機物・リン酸の増施,混層耕,砂客入。(7)泥炭土壌 排水,客土,石灰資材による酸性矯正,微量要素施用。

 土壌の調査結果に基づいて,土壌の肥沃性や作物生育に対する土壌の阻害要因を判定し,また土壌浸食の危険性などを総合的に判断することを〈土壌診断〉といい,診断結果に基づいて土壌改良が実施される。土壌診断はその内容から,(1)作物の生育などが不良の場合に行う対策診断,(2)現行の土壌管理,施肥法が適切かどうかの判定診断,(3)土壌の悪化を早期に発見し作物の減収未然に防ぐことを目的とした定期診断,の三つに分けられる。以上いずれの診断においても,土壌・肥料分野ばかりでなく,その土地の農業事情や作物の栽培法,特性などにも精通していることが必要である。水田,普通畑あるいは果樹園ごとに作物の種類が変わり,好適な土壌の条件も異なるため,土壌診断の分析項目は若干異なる。土壌診断を適切に行うためには,栽培作物の栄養診断をあわせ行うことが重要である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「土壌改良」の意味・わかりやすい解説

土壌改良
どじょうかいりょう

作物生産の基礎である土壌に有機質あるいは無機質の資材を投入し、栽培作物の生育収量がよくなるように土壌の物理的・化学的および生物的な性質を改善することをいう。物理性の改善には土壌の膨軟化、保水性、透水性の改善、団粒形成促進、礫(れき)の除去、漏水防止などがあり、化学性の改善には土壌pHの矯正、リン酸固定の緩和、養分バランス、保肥力の増大などがある。生物性の改善には有用微生物の富化、有機物の腐熟促進、病虫害など有害微生物の抑制などがある。地力保全基本調査(1959~1978)では水田の約4割、普通畑の約7割が土壌改良の対象となる酸性土、不良火山灰土、泥炭土、重粘土、腐植過多土、砂質土、礫質土、有害成分含有土、微量元素欠乏土などの不良土である。

[小山雄生]

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百科事典マイペディア 「土壌改良」の意味・わかりやすい解説

土壌改良【どじょうかいりょう】

耕地土壌の性質を作物栽培に適するよう改良して農業の生産性を向上させること。酸性あるいはアルカリ性の強すぎる土壌,団粒構造が破壊されたり,浸食されやすい土壌,湿田や老朽化水田の土壌,火山灰地・干拓地・泥炭地の水田土壌等がその対象。土壌改良剤の施用のほか灌漑(かんがい),客土,深耕,乾土,床(とこ)締め,田畑輪換,秋耕,牧草輪作などの方法がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「土壌改良」の意味・わかりやすい解説

土壌改良
どじょうかいりょう
soil amendment

土壌の性質を改変し,植物生産により適合させるために石灰,石膏,おが屑その他の土壌改良資材を土壌に加えること。本来の土地改良が土地への資本投下による自然の加工で,農業土木的事業を伴うものであるのに対して,土地への費用投下の持続性が,短期的,経常的な耕耘過程においてなされる土地改良といえる。 (→土壌保全 )

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