シンハラ人(読み)シンハラじん(その他表記)Simhala

改訂新版 世界大百科事典 「シンハラ人」の意味・わかりやすい解説

シンハラ人 (シンハラじん)
Simhala

スリランカの多数民族。名称はシンハラ語で〈獅子子孫〉を意味する。人口は1099万(1981),総人口1485万中74%を占める。5世紀ころに記されたシンハラ王朝の《マハーバンサ(大王統史)》では,北インドで父親のライオン(シンハ=獅子)を殺して王位についたシンハバーフ王の長男ビジャヤVijayaが,700名の部下とともに母国から追放され,スリランカ島に漂着した。同じ日に釈迦涅槃に入ったとされ,シンハラ王朝と仏教との結びつきが強調されている。スリランカの国旗のライオンは,シンハラ人の国であることを誇示した象徴である。このようにして,シンハラ人の出身は北インドであり,シンハラ語はインド・ヨーロッパ語に属するとされている。南インドを出自とする,少数民族タミル人(ドラビダ系)との対立が深刻になるのは,イギリスの植民地支配を受けた19世紀以降であるが,この建国説話を根拠にして,シンハラ人の島であることを主張する民族主義者が多い。

 シンハラ人の90%以上は,南方上座部の仏教(小乗仏教)に帰依する。16世紀のポルトガル支配のもとでキリスト教カトリック)の布教が行われ改宗する者も多く出たが,1948年の独立後再び仏教徒に戻り,シンハラ人のキリスト教徒は約70万人にすぎない。インドと異なり,シンハラ社会のカースト制ではバラモンがなく,農耕カーストのゴイガマGoyigamaが最上位を占める。次に位置する漁業カーストのカラーワKarāvaとニッケイ樹皮を採取するサラーガマSalāgamaとは,13世紀以降に南インドのマラバル海岸から移住してきた人たちである。現在では,通婚以外のカースト規制はほとんどみられない。シンハラ人の身分法は出身地により異なっている。1815年にイギリス支配を受けるまで存続していたキャンディ王国領出身の住民(約40%)にはキャンディ法が,それ以外の地域のシンハラ人(約60%)にはローマン・ダッチ法が適用される。
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旺文社世界史事典 三訂版 「シンハラ人」の解説

シンハラ人
シンハラじん
Sinhalese

スリランカの多数民族。シンハラは“獅子の子孫”の意
スリランカの人口の7割強を占め,ほとんどが上座部仏教徒。1977年以降,シンハラ人の統一国民党政権を担当しており,ヒンドゥー教徒で少数民族のタミル人との対立を続けている。

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世界大百科事典(旧版)内のシンハラ人の言及

【土地保有】より

… これに対し水稲耕作などにより高度な定着農耕が行われる社会では,部族や村落による全体的土地規制の下で,なおかつ特定の土地に対する永続的私的占取が認められる。例えばスリランカのシンハラ人の場合,森林は村落農民全体の共有であったが,宅地,庭畑は村民の私有地であった。さらに特定祖先に系譜的に連なる諸個人が特定耕地を共有し,それぞれの持分に応じて一枚の水田を交替に耕作したり,土地条件の異なる複数の水田を一定順序で交互に耕作した。…

※「シンハラ人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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