日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジッタ」の意味・わかりやすい解説
ジッタ
じった
jitter
アナログ信号をデジタル通信回線で伝送する際に、受信信号に起こる信号の揺らぎをいう。音声などのアナログ信号をPCM(パルス符号変調)などのシステムでデジタル伝送するには、信号の変化周期より速い周期で瞬時値を標本化(サンプリング)し、同時にそれをデジタル符号化(AD変換)して伝送系に送る。受信側では、受信したデジタル符号を、送信の際に標本化したのと同じ周期でアナログ量に戻す(DA変換)。このような伝送システムにおいて、送信と受信のクロックclock(システム全体の動作を制御するために、一定間隔で発生させるパルス信号)がシステム構成上の原因で狂うために、伝送された信号波形がゆがんだり揺らいだりする現象をジッタという。
[石島 巖]
スタッフジッタ
通常、受信側では連続して送られてくるビット(bit)列を、第1ビット目からカウンターで計数し、1バイト(1符号の構成ビット数)ずつにくぎることにより元の符号に戻し、これを順次DA変換して元のアナログ信号を再現する。時分割多重通信では、伝送されてくるビット列に、多重化の段階や群変換の段階を指定するパルス(スタッフパルス)が多重化の一巡ごとに1、0、1、0の順で挿入されていて、チャネルの一巡や群の一巡のタイミングを検出できるようになっている。このパルスが存在することによって、チャネルの始まりの第1ビットがどこにあるか、バイト(byte)のくぎりは正しいかの情報を知ることができるのである。このパルスは前記のカウンターの計数からは除外されているが、そのパルスが存在するため、伝送時間のなかでは中味の信号伝送時間を狭める結果をもたらす。この結果、DA変換のクロックが送信側と正しくあっていても受信パルスとクロックパルスがわずかにずれる障害が発生するのである。ジッタとは、クロックパルスがずれてバイトのくぎりが1ビット間違ってくる前までの状態で、読み取りのタイミングのずれによって再生されるアナログ波形がゆがんでくる状態をさすのである。これが、おもに送受信端局系で生じるスタッフジッタとよばれる現象である。
[石島 巖]
その他のジッタ
スタッフジッタ以外にも中継系の特性によって発生する揺らぎとしてランダムジッタやシステマティックジッタという種類のジッタが存在する。ランダムジッタは中継器の入力雑音やタンク回路の同調誤差などが原因で、再生中継器を何度も通過することによって発生するとされる。システマティックジッタは受信パルス列からタイミングパルスを抽出する自己タイミング方式を採用している中継系で発生し、等化波形の符号間干渉、有限パルス幅効果、振幅位相変換、タンク回路の同調のずれなどが原因と考えられるが、使用されるシステムに大きく影響されるので、どれが支配的原因と断言することはできない。
[石島 巖]