ジャッカル(読み)じゃっかる(英語表記)jackal

翻訳|jackal

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャッカル」の意味・わかりやすい解説

ジャッカル
じゃっかる
jackal

広義には哺乳(ほにゅう)綱食肉目イヌ科イヌ属に含まれる動物のうち、旧世界に産するオオカミに似た小形種の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この仲間にはキンイロジャッカルヨコスジジャッカルセグロジャッカルシメニアジャッカルの4種がある。いずれもオオカミ、ディンゴ、パリアイヌなどに似るが、吻(ふん)が細くて先がとがり、耳介が大きい。乳頭はそれらより1対少なく4対で、臼歯(きゅうし)の基部を取り巻く輪状の高まりがあり、この点でアメリカのコヨーテに酷似する。これら前記の種はすべて第三紀鮮新世末または第四紀更新世初頭に現れた原始的なイヌ属で、互いに近縁の関係にある。

 狭義のジャッカルはキンイロジャッカルCanis aureusをさす。ケニア以北のアフリカ、アラビア半島からヨーロッパ南東部、インド、スリランカ、タイまでの地域に分布し、頭胴長60~105センチメートル、尾長18~27センチメートル、体重6~15キログラム。体は赤褐色ないし黄褐色で、頬(ほお)と体下面は淡色尾端黒色である。普通、低地から標高2000メートルまでの半砂漠草原、開けた森林に1対ですみ、多くは夜行性で昼間は茂みや穴の中で休む。食物は小獣、地上性の鳥、トカゲ、昆虫、果実、猛獣の食べ残した死肉などであるが、ときにはレイヨウの子、ヒツジなどを捕食する。繁殖期は不定で60~63日の妊娠ののち、3~8子、まれに12子を産む。子は10~14日で目が開き、約10か月で性的に成熟する。子は普通、雌雄が協力して育てる。寿命は野生では10~12年である。

 そのほか、セグロジャッカルC. mesomelasは、やや尾が長く背が黒い。尾端は黒色。アフリカの東部と南部に産する。ヨコスジジャッカルC. adustusはさらに尾と四肢が長く、上を白で縁どられた黒帯が体側にあり、尾端が白い。サハラ砂漠以北と南端部を除くアフリカに分布する。習性はいずれもキンイロジャッカルによく似ている。シメニアジャッカルC. simensisは、ほかのジャッカルと形態や習性がやや異なり、ネズミを主食にする。エチオピアの3000~4000メートルの高原に普通、単独ですみ、毛色が鮮やかな赤褐色で吻がとくに細長いところからシメニアギツネともよばれる。尾端は黒いが、そのほかの部分には黒毛を混じない。

[今泉吉典]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャッカル」の意味・わかりやすい解説

ジャッカル
Canis aureus; golden jackal

食肉目イヌ科。体高 40~45cm,体重 9kg内外。形態はややオオカミに似て吻がとがり,耳は大きく,尾は太くて長い。普通単独で生活するが,ときに群れをつくることもある。ネズミ,トカゲ,昆虫類などを捕えるが,雑食性で,腐肉をあさる習性がある。夜行性。アフリカ北部,中央アジア,ヨーロッパなどのサバナ,砂漠,森林に生息し,人家付近に現れることもある。毛色によりセグロジャッカル,ヨコスジジャッカル C. adustusなどの近縁種がある。なお,イヌとの間に生殖力をもつ雑種をつくることができる。

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