レイヨウ(英語表記)antelope

翻訳|antelope

改訂新版 世界大百科事典 「レイヨウ」の意味・わかりやすい解説

レイヨウ (羚羊)
antelope

多くは美しい体型と毛色を備えたウシ科の偶蹄類アンテロープともいう。この仲間をカモシカと訳すことがあるが,これはまちがいである。アジアの一部に少数の種が分布するが,大多数はアフリカに見られ,系統的には一つのものではなく,一つの分類群にはまとめられない。ウシ科の動物のうちスイギュウ,ヤギュウ,カモシカヤギヒツジの各類を除いたものの総称といえる。

 体の大きさは変化に富み,最大はクロクビイランド(ジャイアントイランドTragelaphusTaurotragusderbianusで,体長3.45m,尾長90cm,肩高1.8m,体重1000kg,角長1.2mに達するが,最小のローヤルアンテロープでは体長40~50cm,尾長5~8cm,体重3~4kg,角長2.5cmにすぎない。多くのものは草原,砂漠,ときに森林にすみ,体つきは走行に適して胴と四肢が細く,あごが長く,頭を高く保っている。ひづめは小さく,体毛は短く,毛色は美しい。角は雌雄にあるもの,雄だけにあるものとあり,形状はさまざまである。においを放つ眼下腺もあるものとないものとがあり,乳頭数も変化がある。27属84種ほどがあり,8亜科に分けることができる。

(1)ブッシュバック亜科Tragelaphinae アフリカ産のものは中型~大型で,角はかなり長く渦巻状に1~2回ねじれ,前面基部に始まり,ねじれに沿って先にのびる明りょうな稜がある。体は黄褐色のものが多く,ふつう目の間,頰,のど,前胸,ひづめの上方に白斑があり,胴に白色の横縞がある。森林ややぶにすむブッシュバックTragelaphus scriptus,体重のわりに身軽にジャンプするイランドT.(Taurotragusoryx,インドの平原にすむニルガイBoselaphus tragocamelus,雄には角が4本もあるヨツヅノレイヨウTetracerus quadricornisなど3属11種がある。

(2)ハーテビースト亜科Alcelaphinae 大型で尾が長く,先端に房毛(ふさげ)がある。眼下腺と前足に蹄間腺が発達する。角は雌雄にあり,中位の長さで1~2回曲がり,明りょうな稜はなく,根もとのほうに輪状の高まりがあるものが多い。体は黄褐色,栗色,灰色などあり,白斑は左右の目の間にときどきみられる。すべてアフリカ産で,300~1000頭にもなる群れをつくるハーテビーストAlcelaphus buselaphus,独特の長い顔と短く太い角をもつコンジハーテビーストA.lichtensteini,アリ塚などに登って敵を見張る習性をもつトピDamaliscus lunatus,大群で季節的移動をするヌーConnochaetes taurinusなどの3属7種がある。

(3)オリックス亜科Oryginae 大型で雌雄とも長い槍状,サーベル状,あるいは栓抜き状の角をもち,顔に腺はなく,尾は長く先に房毛がある。体は白色や淡黄褐色などで,鼻づらや目のあたりに黒色または褐色の斑紋がある。アフリカからアラビアの乾燥地帯に分布し,絶滅が心配されているアラビアオリックスOryx leucoryxなどのオリックス属,古代エジプト人によって半家畜として飼育されたことのあるアダックスAddax nasomaculatus,もっともみごとなレイヨウといわれるセーブルアンテロープHippotragus nigerなど3属7種がある。

(4)リードバック亜科Reduncinae 中型ないし大型で,角は雌になく,尾は中位の長さで先端の房毛はふつうない。大きな2個のひづめは皮でつながる。すべてアフリカ産で,鼻先サイガのようにふくれるリーボックPelea capreolus水辺の草原にすむリードバックRedunca arundinum,水によく入るウォーターバックKobus ellipsiprymnusなど3属10種がある。

(5)インパラ亜科Aepycerotinae 中型で角は雄にだけあり,細長く,前から見ると幅広の竪琴形。アフリカ産でインパラAepyceros melampus1種だけを含む。

(6)ガゼル亜科Gazellinae 小型か中型で優美で,多くが眼下腺をもつ。角は雌にはないか,あっても小型で,栓抜き状にねじれるか,または後方に曲がり,先端付近で前上方につき出る。多くは砂色で,アフリカとアジアに分布する。インド産で雄の体が黒いブラックバックAntilope cervicapra,警戒,逃走,遊びのときに高く跳びはねる習性をもつスプリングボックAntidorcas marsupialis,中央アジア産で時速96kmで走れるモウコガゼルProcapra gutturosa,多くの肉食獣にねらわれるグラントガゼルGazella granti,非常に警戒心が強く,やぶの中で生活するディバタグAmmodorcas clarkei,あごが長く,しばしば後肢で立ち上がって高いところの葉を食べるジェレヌクLitocranius walleriなど6属18種がある。

(7)ダイカー亜科Cephalophinae きわめて小型で,角はふつう雌雄にあるが耳よりも短く,頭頂の冠毛でほとんど隠れている。眼下腺があり,数個の開口部が一列に並んでいる。体は淡褐色,赤褐色,黒褐色などで,すべてアフリカ産。森にすみ果実をよく食べるケープダイカー(サバンナダイカー)Sylvicapra grimmia,やぶ地にすみ草や葉を食べるコシキダイカーCephalophus sylvicultorなど2属17種がある。

(8)ローヤルアンテロープ亜科Neotraginae きわめて小型で,角はふつう雄だけにあり,眼下腺の開口部は1個で,頭頂に冠毛はない。体は灰褐色,赤褐色,オリーブ色などで,すべてアフリカ産。ごく小さくほぼウサギ大のローヤルアンテロープNeotragus pygmaeus,眼下腺の麝香臭がきわめて強いジャコウアンテロープ(スニ)N.moschatus,やぶにすみ木の葉を主食とするキルクディクディクMadoqua kirkii,岩場にすみ6mも跳びはねるクリップスプリンガーOreotragus oreotragus,なわばりに強い執着を示すオリビOurebia ourebi,行動圏の各所に糞で目印をつけるといわれるスタインボックRaphiceros campestris,荒れた岩山にすみ,一つの丘に一つの群れしか見られないといわれるベイラDorcatragus megalotisなど6属13種がある。

 なお,レイヨウ類のうち,とくに姿の美しい砂漠にすむガゼル類の約15種を除いた残りだけを,アンテロープと呼ぶことがある。
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百科事典マイペディア 「レイヨウ」の意味・わかりやすい解説

レイヨウ(羚羊)【レイヨウ】

アンテロープとも。偶蹄(ぐうてい)目ウシ科のうち四肢が細く走るのに適した形をもつ一群の動物。形はシカに似る。普通,角は雄だけにあるが,雄雌ともあるものもある。大きさは最小のローヤルアンテロープ(肩高25cm)から最大のクロクビイランド(ジャイアントイランド,同1.8m以上)までさまざま。多くはアフリカ,1部はアジアに分布し,普通,草原や砂漠に群生する。草食性。ヌー,クーズー(肩高1.6m,中央アフリカ),ニルガイ(同1.5m,インド),シロオリックス(同1.1m,スーダン),ハーテビースト(同1.3m,東アフリカ),インパラ(同1.0m,東・南アフリカ),トムソンガゼル(同70cm,東アフリカ)その他種類が多い。俗にカモシカということもあるがこれはまちがい。山岳にすむ真のカモシカ類(日本のカモシカ,東アジアのチョウセンカモシカ,ヨーロッパのシャモアなど)とは全く異なる。
→関連項目イランド

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普及版 字通 「レイヨウ」の読み・字形・画数・意味

妖】れいよう

怪異。

字通「」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レイヨウ」の意味・わかりやすい解説

レイヨウ
れいよう

アンテロープ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レイヨウ」の意味・わかりやすい解説

レイヨウ

「アンテロープ」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のレイヨウの言及

【カモシカ】より

… タイワンカモシカは肩高50~60cmと小さく,台湾奥地の高地にすむが数は少ない。なお,レイヨウ類(広義のアンテロープ類)もしばしばカモシカと呼ばれるが,別系統の動物であり,〈カモシカのような脚〉という場合のカモシカはこのレイヨウ類を指す。【今泉 吉晴】
[民俗]
 古語では〈かましし〉,民間ではイワシカ,アオシシなどともいう。…

※「レイヨウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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