オーストラリアに野生するイヌに似た哺乳類で,食肉目イヌ科に属する。約9000年前,アボリジニーがアジアから渡ったときに,家畜として連れていたものが,のちに野生化したともいわれ,ニューギニアのパプアディンゴC.hallstromiも同じような起源であるという説が強い。体長117~124cm,尾長30~33cm,肩高50cm,体重10~20kg。体つきは家畜のイヌに似るが,吻(ふん)が長く,裂肉歯(上の第4前臼歯(ぜんきゆうし)と下の第1臼歯)が巨大で,犬歯は長く細い。体毛は短く,ふつう茶色がかった黄色だが,白から黒まで多様である。足と尾の先はしばしば白い。単独か小さな家族群でくらし,狩りの方法は他のイヌ類同様,獲物(カンガルー,ワラビーときにはヒツジやウシも)を長距離追いかけて相手を疲れさせてからとらえる。交尾期は冬で,妊娠期間約63日の後に1産1~8子を生む。子は巣穴で生まれ,約2ヵ月間そこで授乳される。オーストラリア本島で肉食性有袋類のタスマニアデビルやフクロオオカミが絶滅したのは,本種との競合のためであろうといわれる。
執筆者:今泉 忠明
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哺乳(ほにゅう)綱食肉目イヌ科の動物。ジンゴともいう。密林地帯を除くオーストラリアに広く分布し、中形日本犬に似るが吻(ふん)が長く、尾を巻かず、裂肉歯が顕著に大きい。体長100センチメートル、尾長35センチメートル前後。オオカミと違って耳介が外上方に向かい、毛が短く背筋で3センチメートル、尾で6センチメートル前後、尾が房状でない。毛色は黒から白まであるが、普通は黄褐色で体の下面は淡色、尾と足の先が多くは白色、前肢前面に暗色斑(はん)を欠く。ウサギの穴や岩の下にすみ、ヒツジ、ウサギ、カンガルーなどを捕食するほか、先住民の残飯をあさる。めったにほえない。石器時代にヨーロッパにいたイヌの原種に酷似する。先住民が約9000年前に連れてきた家畜犬が野生化したと考えられていたが、近年、イヌとは別の野生種で、一度も家畜化されたことがないとの説も現れ、真相は明らかにされていない。ニューギニア島の山地に分布するニューギニアイヌもしばしば同種とされる。
[今泉吉典]
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…また前肢の前面,外側の濃色部と内側の淡色部の境には,ときに地色よりわずかに暗色で不明りょうなこともあるが,多くは黒褐色の鮮明な縦斑がある。ところがイヌとディンゴでは背筋の毛は体側の毛よりわずかに長いだけで(この点はヨコスジジャッカルに似る),この部分の毛色は体側とわずかしか違わない。また前肢には暗色縦斑を欠き,この点ではシメニアジャッカル(アビシニアジャッカル)とセグロジャッカルに似ている。…
…つまり,地下生活に適応したフクロモグラ,樹上性で滑空するフクロモモンガやチビフクロモモンガ,ユーカリの葉だけを食物とするコアラ,草食性で半砂漠にすむアカカンガルー,林縁性のハイイロカンガルー,食肉性のフクロオオカミやフクロネコ,アリを専門に食べるフクロアリクイなどさまざまなものが生息する。残りの半分は比較的新しく入って来た真獣類のネズミとコウモリの仲間,先住のアボリジニーが連れて来た野犬(ディンゴ),および植民後に白人がヨーロッパなどから導入したウサギ類,キツネ,シカ,ラクダなどである。オウム科(オーストラリア産52種)の原産地である同大陸からは,733種の鳥類が記録されている。…
※「ディンゴ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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