じんま疹・血管性浮腫

内科学 第10版 「じんま疹・血管性浮腫」の解説

じんま疹・血管性浮腫(その他のアレルギー性疾患)

定義・概念
 じんま疹(urticaria)は膨疹紅斑を伴う一過性,限局性の浮腫)が出没する疾患であり,かゆみを伴うことが多い.特に,皮膚または粘膜深部を中心とした限局性浮腫は血管性浮腫(angioedema)とよばれる(秀ら,2011).
病態
 じんま疹では,皮膚マスト細胞が何らかの機序により脱顆粒し,皮膚組織内に放出されたヒスタミンなどの化学伝達物質が皮膚血管と神経に作用し,血管拡張,血漿成分の漏出,かゆみを生じる.
臨床症状
 かゆみの強い膨疹が身体の一部または全身に突然出現する.個疹の経過は一過性で,通常1~数時間以内(遅くとも24時間以内,まれにそれ以上)で消失し,また別の部位に出没する(図10-34-1).気道粘膜に浮腫を生じると,嗄声や呼吸困難を伴う場合もある.
病型分類
 じんま疹は臨床的に大きく4つの病型に分類される.
1)特発性じんま疹:
個々の皮疹に関する直接的原因ないし誘因なく自発的に膨疹が出現するもので,医療機関を受診するじんま疹のなかで最も多い.発症してから1カ月以内に治まるものを急性じんま疹,それ以上続くものを慢性じんま疹とよぶ.
2)刺激誘発型のじんま疹:
特定刺激ないし負荷により皮疹を誘発することができるじんま疹.刺激誘発型のじんま疹には,アレルギー性のじんま疹,食物依存性運動誘発アナフィラキシー(特定食物摂取後2~3時間以内に運動負荷が加わることで生じる),非アレルギー性のじんま疹,アスピリンじんま疹,物理性じんま疹(皮膚表面の機械的擦過,寒冷刺激,日光照射,温熱負荷,圧迫などにより生じる),コリン性じんま疹(入浴,運動,精神的緊張など発汗ないし発汗を促す刺激が加わったときに生じる),接触性じんま疹が含まれる.
3)血管性浮腫:
皮膚,粘膜の限局した範囲に生じる深部浮腫で,顔面,特に口唇,眼瞼に好発する.血管性浮腫には,特発性の血管性浮腫(明らかな直接的誘因なく自発的に症状が出没する),外来物質起因性の血管性浮腫,補体第一成分エステラーゼ阻害因子(C1-esterase inhibitor:C1-INH)の低下による血管性浮腫(C1-INH遺伝子の異常あるいは後天的理由でC1-INHの機能が低下したために生じる)が含まれる.
4)その他のじんま疹およびじんま疹類似疾患:
じんま疹様血管炎(個々の皮疹が24時間以上持続し,皮疹消退後に色素沈着を残す),色素性じんま疹(色素沈着部を擦過するとその部位に一致して膨疹を生じる:Darier徴候),Schnitzler症候群(慢性じんま疹,間欠熱,関節痛,骨痛などを生じる),クリオピリン関連周期性症候群(クリオピリン蛋白の遺伝子異常に起因し,発熱や倦怠感,関節痛などの炎症症状とじんま疹様の皮疹の出現を繰り返す)が含まれる.
診断・検査成績
 かゆみの強い膨疹が24時間以内に出没することを確認できればじんま疹と診断できる.特発性のじんま疹の診断には特別な検査を要しない.アレルギー性のじんま疹が疑われる場合には,被疑抗原に対する血清特異的IgEの検出などが診断確定に有用である.
治療
 じんま疹の治療の基本は,原因・悪化因子の除去・回避と抗ヒスタミン薬を中心とした薬物療法である.抗ヒスタミン薬では鎮静性の低い第2世代の薬剤(フェキソフェナジン塩酸塩,ベポタスチンベジル酸塩)が第一選択薬として推奨される.重症・難治性のじんま疹に対してはステロイド内服を行うこともある.[佐伯秀久]
■文献
秀 道広,森田栄伸,他:蕁麻疹診療ガイドライン.日皮会誌,121: 1339-1388, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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