改訂新版 世界大百科事典 「スイートオレンジ」の意味・わかりやすい解説
スイートオレンジ
sweet orange
Citrus sinensis Osbeck
ミカン科の常緑果樹でアマダイダイ(甘橙)ともいう。世界のかんきつ類生産量の約70%を占める。酸が多いサワーオレンジなどと区別するためスイートオレンジというが,単にオレンジと呼ばれることが多い。突然変異で多くの品種が系統分化し,それらは次の4品種群に大別できる。(1)普通系オレンジcommon orange 世界的に栽培されているバレンシアオレンジなど多くの品種が含まれる。(2)ネーブルオレンジnavel orange。(3)血ミカンblood orange果皮と果肉にアントシアンanthocyanを含み赤紫色を呈する。イタリア,スペインなどでかなり栽培されている。(4)無酸オレンジsugar orange 外観は普通系オレンジと同じだが果汁中の酸含量がきわめて少なく(約0.2%),ほとんど酸味を感じない。アラブ諸国などで栽培されている。また熟期によって早生,中生,晩生の品種に分類される。
アッサムを中心とする地域で生じ,まず中国に伝播(でんぱ)し,品種が分化発達した。ヨーロッパには15世紀初頭に陸路原生地より伝播する一方,海路喜望峰経由で中国の優良品種が導入され,血ミカン,無酸オレンジを含む地中海品種群の基になった。さらにヨーロッパから新大陸に伝播し,バレンシアオレンジ,ネーブルオレンジが生じて全世界に広まった。ほかにも各国で独特の品種が生じている。日本には中国から明治時代以前に伝来している。しかし,現在の栽培品種の基は明治時代以降導入されたものである。一般に寒さに弱く,寒い地域では高品質のものは生産されない。
枝に小さなとげを生じる。葉の翼葉は小さい。花は5月に咲き,白色5弁。果実は球形のものが多い。一般に果皮は橙色で中程度の厚さ。芳香がある。果肉は黄橙色でウンシュウミカンに比べやや硬い。大半の品種は1%前後の酸と10~12%の糖分を含む。主要品種の種子数は少なく,多胚性。生食または果汁にされる。アメリカのフロリダ州やブラジルのオレンジは果汁に加工される率が高い。果汁色は淡いが芳香があるため,色はよいが香りの少ないウンシュウミカンの果汁に混合される。
→オレンジ
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報