改訂新版 世界大百科事典 「スクマ族」の意味・わかりやすい解説
スクマ族 (スクマぞく)
Sukuma
東アフリカのタンザニア北部,ビクトリア湖の南に広がるスクマ・ランドと称される肥沃な土地に居住するバントゥー系の農耕民。人口は約150万(1972)。トウモロコシ,モロコシ,ミレット,キャッサバなどを自給作物として栽培するほか,商品作物としてワタの栽培にも従事している。牛などの家畜も飼育するが,とくに牛は花嫁代償(婚資)にも用いられ,社会の中で重要な価値をもっている。また,今日では食肉用として販売されている。スクマ族の口頭伝承によれば,先祖はタンザニア中央部に住むニャムウェジ族から分かれて,この地に北上してきたと伝えられる。伝統的には39もの首長国chiefdomに分かれていたが,各首長はかつて北から侵入してきた牧畜民アンコーレ族のうちのバヒマ(ヒマ)族の子孫であるとの系譜をもっている。首長は祖先を崇拝する儀礼の中心でもあり,政治的・宗教的権威を担っている。また呪術師による治療儀礼も行われている。キリスト教の布教もある程度進んでいる。
執筆者:赤阪 賢
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報