改訂新版 世界大百科事典 「スケアガート貫入岩体」の意味・わかりやすい解説
スケアガート貫入岩体 (スケアガートかんにゅうがんたい)
Skaergaard intrusion
グリーンランド東部のスケアガート半島にある層状貫入岩体。層状貫入岩体のなかで,最も詳細に研究され,岩石学の進路に大きい影響を与えた。
この岩体は1930年代のはじめに探検隊によって発見された。その層状構造のために,海上から見ると一見堆積岩のように見えたが,実際は斑レイ岩であった。軸が南に急角度で傾いた漏斗状の岩体で,長方形の露出面を示し,南北の直径が約9.5km,東西の直径が約7kmであり,円錐の体積は約500km3に達する。先カンブリア時代の片麻岩と白亜系~下部始新統を貫く始新世の貫入岩体である。周縁と上部の周縁相に包まれて層状部がある。層状部は下から上へ向かって,カンラン石斑レイ岩,斑レイ岩,フェロ斑レイ岩,石英フェロ斑レイ岩が重なり,さらに末期分化物はグラノファイアーとして上部周縁相に注入する。地表で見られる層状部の厚さは約3.5kmであるが,この岩体は,それよりも下方に10kmもつづいていると考えられていた。しかし,重力の測定結果から,このかくれた部分はずっと小さいらしいといわれている。層状部の空間を占めていたソレアイト質のマグマは,きわめてゆるやかに冷却結晶しながら対流し,円錐体の下部から上部へ向かって,順次に結晶が堆積したと考えられる。
執筆者:諏訪 兼位
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報