日本大百科全書(ニッポニカ) 「スタイリスティックス」の意味・わかりやすい解説
スタイリスティックス
すたいりすてぃっくす
Stylistics
アメリカのコーラス・グループ。1968年にフィラデルフィアで結成され、1970年代のディスコ・ブームにあって日本でもファンが多かった。オージェイズやデルフォニックスなどとともに、洗練されたコーラス・ワークとサウンド・プロダクションで「フィラデルフィア・ソウル」とよばれた一大勢力の一翼を担ったグループでもある。
スタイリスティックスは、地元フィラデルフィアの二つのグループ、モナークスとパーカッションズからのメンバー、ラッセル・トンプキンズRussell Thompkins Jr.(1951― )、エイリオン・ラブAirrion Love(1949― )、ハーブ・マレルHerb Murrell(1949― )、ジェームズ・ダンJames Dunn(1950― )、ジェームズ・スミスJames Smith(1950― )が集まって結成された5人組である。中心となったのは女性的なファルセット(裏声)を得意としたトンプキンズで、彼らは1971年にフィラデルフィア・ソウルの代表的プロデューサー、トム・ベルThom Bell(1943―2022)と出会い、彼の下で数々のヒット曲を生み出すことになった。
代表作は「ユー・アー・エブリシング」「ユー・メイク・ミー・フィール・ブランニュー」「ベッチャ・バイ・ガリー、ワウ」「アイム・ストーン・イン・ラブ・ウィズ・ユー」「ブレイク・アップ・トゥ・メイク・アップ」などで、1974年にスタイリスティックスがベルと袂(たもと)を分かつまで、そのロマンティックなコーラスは白人層にも広く受け入れられた。またかつての日本のディスコにあっては、恋人と2人で踊る「チーク・タイム」の代名詞ともなったのが「ユー・メイク・ミー…」など彼らのラブ・バラードであった。
その後、ディスコ時代のプロデューサー、バン・マッコイVan McCoy(1944―1979)と組み、さらに甘く穏やかなサウンドを追求することになる。
1980年代以降、人気は衰えたものの、ディスコ・リバイバルのステージには欠かせない存在として活動している。
[藤田 正]