翻訳|disco
DJ(ディスク・ジョッキー)がレコードやCDをかけ、その音楽で客を踊らせる喫茶店や酒場のこと。フランス語で円盤の意味のディスクdisqueがレコードの意味となり、レコード室がディスコテークdiscothèqueとなり、さらにそれがレコード室の意味を離れ、ディスコとなった。第二次世界大戦中、ジャズが禁止されていたナチス占領下のパリで、若者が地下倉庫で密かにレコードをかけて踊っていたのが、ディスコの始まりといわれている。ディスコの本格的な流行は1973~74年ごろアメリカにおこった。ベトナム戦争やオイル・ショックのなかで若者のストレス発散の場となりえたからである。とくに黒人によるリズミカルなソウル・ミュージックがディスコを通じて流行していった。ディスコを舞台にした映画『サタデー・ナイト・フィーバー』の公開(1978)を機に爆発的かつ世界的な広がりをみせた。日本でも70年代後半から流行して、10代と20代前半の若者層を中心に、奇抜な髪型やファッションに代表されるさまざまなディスコ風俗やディスコ文化を生み出した。とくに80年代後半のいわゆるバブル経済期には全盛を迎え、多人数の客の踊る大規模なディスコが大都市を中心に全国的に流行した。
1990年代以降は、ディスコにかわってクラブという呼称が一般的に使われるようになり、従来のディスコとは異なって比較的少人数の客を相手にする小規模な店が増えている。音楽のジャンル別に専門のDJがおり、それぞれのDJを目当てに客が集まることも多い。クラブでは、DJのパフォーマンス(演出)と踊っている客とでつくりだす店の雰囲気が重視されており、そこからテクノやハウスといった独自のリミックス(編集・合成)によるクラブ・ミュージック、ラップやヒップ・ホップなど新しいクラブ文化が生み出されている。現在でもディスコはクラブと名前を変えながらも、新たな若者文化を発信し続けているのである。
[安達正嗣]
『野田努編『クラブ・ミュージックの文化誌――ハウス誕生からレイヴ・カルチャーまで』(1993・JICC出版局)』▽『野田努著『ブラック・マシン・ミュージック――ディスコ、ハウス、デトロイト・テクノ』(2001・河出書房新社)』▽『アラン・ライト編、「ブラスト」編集部監修『ヒストリー・オブ・ヒップ・ホップ』(2002・シンコー・ミュージック)』
もとはイタリア語,スペイン語などで〈レコード〉を意味した(フランス語のディスクdisqueにあたる)。しかし1970年代後半から,ロックないしソウル系のダンス(ディスコ・ダンス),およびダンス向きに作られた音楽(ディスコ・ミュージック,ディスコ・サウンド)を指す言葉として広く使われるようになった。これは,1960年代にフランスで,ダンス・バンドの代りにレコードを使用するダンスホールを〈ディスコテークdiscoteque〉と呼んだことからきている。それが70年代にかけてしだいにアメリカでも行われるようになり,省略して〈ディスコ〉と呼んだもの。なお〈ディスコテーク〉は本来は〈ビブリオテーク〉(図書室,蔵書)に対比してレコード・ライブラリーを意味する言葉であった。
レコードを使用するダンスホールは,最初は若年層向きの安直な店で,経費とスペースを節約するために発想されたものだが,客席から見えるガラス張りの仕切りの中でディスク・ジョッキーが客に語りかけながらレコードをかけるようになって,親しみやすい雰囲気が若者の人気を呼び,さらにレコード会社がディスク・ジョッキーの使いやすいように30cmシングル盤を作るといった動きから,リズムを強調した踊りやすい音楽と,それに合わせた新しいダンスとが次々に出現,77年にディスコ・ダンスの名手を主人公にしたジョン・トラボルタ主演の映画《サタデー・ナイト・フィーバーSaturday Night Fever》がビージーズBee Geesの音楽とともに世界的にヒットして,ディスコ・ブームを決定づけた。
→ソウル・ミュージック
執筆者:中村 とうよう
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