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脂環式化合物 シカンシキカゴウブツ

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デジタル大辞泉の解説

しかんしき‐かごうぶつ〔シクワンシキクワガフブツ〕【脂環式化合物】

炭素原子が環状に結合した化合物で、芳香性をもたないものの総称。鎖式化合物である脂肪族化合物に似た性質をもつ。シクロヘキサンシクロペンタンなど。

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百科事典マイペディアの解説

脂環式化合物【しかんしきかごうぶつ】

炭素原子が環状に結合した構造の有機化合物のうち芳香族化合物を除いたものをいう。環状テルペンステロイドなど。環をつくる炭素原子数により3員環化合物,4員環化合物などと呼ぶ。
→関連項目炭化水素炭素環式化合物

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世界大百科事典 第2版の解説

しかんしきかごうぶつ【脂環式化合物 alicyclic compound】

炭素環式化合物のうち芳香族化合物を除いたものをいう。脂肪族化合物に似た環式化合物の意味。多重結合を含まない飽和のものも,また多重結合を含む不飽和のものもあるが,どちらもその反応性が芳香族化合物とは著しく異なるので,これと区別される。飽和の単環式のものは,シクロアルカンcycloalkaneあるいはシクロパラフィンcycloparaffin(e),シクロパラフィン系炭化水素といい,石油の分留によって得られる。

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大辞林 第三版の解説

しかんしきかごうぶつ【脂環式化合物】

炭素環式化合物のうち、芳香族化合物に属さないものの総称。性質は鎖式化合物に似ている。シクロヘキサンなど。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

脂環式化合物
しかんしきかごうぶつ
alicyclic compound

炭素原子だけが環状に結合している化合物のうち、ベンゼンなどの芳香族化合物を除いたものの総称。その性質が鎖式の脂肪族化合物に似ていることから、「肪族環式化合物」を略して「脂環式化合物」とよばれている。
 環の中に二重結合や三重結合をもつ不飽和脂環式化合物もある。不飽和脂環式化合物は相当する鎖式の置換アルケンや置換アルキンと本質的に似た性質や反応性を示す。また二つ以上の環構造をもつ脂環式化合物も知られている。天然にはテルペン、ステロイド、性ホルモンなどの基本骨格として広く分布している。[向井利夫・廣田 穰]

命名法

すべての炭素原子が飽和されている脂環式炭化水素をシクロアルカン、環内に二重結合が一つあるものをシクロアルケン、環内に三重結合が一つあるものをシクロアルキンという。シクロアルカンはCnH2n、シクロアルケンはCnH2n-2、シクロアルキンはCnH2n-4の組成をもつ。脂環式炭化水素は、一般に同数の炭素原子をもつ鎖式(脂肪族)炭化水素名を基にして、これに「環」を意味する接頭語シクロ(cyclo)をつけて命名する。
 図Aのように、飽和の炭素原子8個が環状に並んでいるものは、シクロ(環)+オクタン(鎖式C8飽和炭化水素)=シクロオクタンと名づけられる。また、炭化水素が多重結合を含む場合、二重結合には「エン」、三重結合には「イン」をつけて表すため、シクロオクタンのC-C結合の1本が二重結合になるとシクロオクテンとなる。すなわち、シクロ(環)+オクタン(C8炭化水素)+エン(二重結合化合物)=シクロオクテンである(オクタンやペンタンなど、同炭素数の飽和炭化水素名の語尾の「ン」は、結合を表す「エン」や「イン」の語尾と重なるので省略する)。
 一つの環に二つ以上の二重結合をもつ脂環式化合物も知られている。二重結合が二つある場合はシクロアルカジエン、三つある場合にはシクロアルカトリエン、四つある場合にはシクロアルカテトラエン……のように、接頭語ジ(di)=2、トリ(tri)=3、テトラ(tetra)=4……を、二重結合「エン」や三重結合「イン」の前につけて、環内にある多重結合の数を示す。
 たとえば、図Aの1,5-シクロオクタジエンの名前は、シクロ(環)+オクタン(C8炭化水素)+ジ(二つ)+エン(二重結合化合物)をあわせてつくった名前で、8個の炭素原子からなる環の中に二重結合が二つある化合物を意味している。最初の1,5-は二重結合の位置を示している。
 脂環式炭化水素の構造を化学式で書くときには、図Bの(1)の上段のように、シクロプロパンの3員環は正三角形、シクロペンテンの5員環は二重結合を表す二重線をもつ五角形などのように、便宜上、環を構成する原子と同数の角をもつ(正)多角形で書き表すことが多い。また、2個以上の環をもつ多環式化合物は、ビbiまたはジ(2)、トリ(3)、テトラ(4)などの数詞を「シクロ」の前につけて命名するが(IUPAC命名法)、この方法は図Bの(1)の下段に示すように複雑なので、しばしば図Bの(2)のような慣用名を用いる。[向井利夫・廣田 穰]

環の大きさによる分類

アルカンの鎖の両端の炭素原子から、それぞれ1個の水素原子を取り去り、C-C結合をつくると環式化合物CnH2nができる。これがシクロアルカンで、3員環のシクロプロパンから大環状のものまで知られている。
 脂環式化合物の性質は、母体の鎖式化合物に似ているが、環の大きさによって、安定性や反応性に相違が現れてくる。そこで、小環状化合物(3、4員環)、正常環状化合物(5~7員環)、中環状化合物(8~11員環)および大環状化合物(12員環以上)に分けて反応性などの諸性質を考えると便利である()。[向井利夫・廣田 穰]

立体構造――環のひずみと立体配座

なぜ環の大きさが異なると反応性が変わるのか、シクロアルカン類の立体構造、すなわち分子の形から考察してみよう。飽和炭素原子の正常の結合角は109.5°であるが、3員環、4員環および5員環化合物は分子が平面構造をとるとすれば、その結合角は60°、90°、108°となる。シクロプロパン(3員環)やシクロブタン(4員環)では、正常値の109.5°からの差が大きいので、結合角のひずみ(ストレインstrain)が大きくなって、分子は高いエネルギーをもち不安定化する。
 これと対照的に、5員環のシクロペンタンでは結合角は108°で正常値に近いので結合角だけを考えると、ひずみは小さく安定である。しかし平面構造のシクロペンタン分子では隣どうしのメチレン基-CH2-の水素が重なり合い立体的不安定化をもたらす。この水素の重なり合いによる立体反発を避けるために、シクロペンタン分子は完全な平面構造ではなくすこしひだのある構造をとる。このひだのある構造はC-C単結合をねじることによってできる。結合の周りのねじれ角の変化によって生ずる分子のさまざまな形を立体配座(コンホメーション)という。シクロペンタンではねじれ角が一定の値をとらず立体配座は流動的に変化する。
 6員環のシクロヘキサンになると各炭素間の結合角は109.5°に近くなり、まったくひずみのない対称性の高い立体構造をとる。この場合にも、分子内のどの結合も切断することなく、単にC-C結合をねじることによって、多数の立体配座が生ずる。このうちもっとも安定で、常温のシクロヘキサン分子の大部分がとっているのが椅子(いす)形配座である。椅子形では隣どうしのメチレン基の水素の重なりが最小になるようにすべてのC-C結合がねじれ形配座をとっている。よく知られている舟形では舟首と舟尾の水素が近づくほか、四つのメチレン基の水素の重なりが最大になる。したがって、舟形配座は椅子形配座よりも不安定で、実際には安定に存在することができない。常温においてこれら種々の配座の間には平衡が存在し、相互に変換しうるが、安定な椅子形が圧倒的に多い割合で存在する(図C)。
 中環状化合物においても、炭素の結合角は109.5°に近くなり、環は平面構造からずれて、角度ひずみのほとんどない立体構造をとるが、隣どうしのメチレン基の水素間の重なりが生じたり、水素原子が環の内側に向かい重なり合ってファン・デル・ワールス力による反発を生じたりして、不安定化の原因となる。シクロノナン(9員環)やシクロデカン(10員環)などでは、1、5位、1、6位の水素が環の内側を向いた配座が安定となる。これら中環状化合物では、接近した炭素間での渡環反応が特徴的な反応として現れてくる。また、12員環以上の大環状化合物になると、分子の自由度が大きくなり、炭素間の結合角(∠CCC)が正常値をとり、かつメチレン基の水素間の反発も存在しない配座をとり得るので、鎖式化合物と同じような安定性と反応性を示す。[向井利夫・廣田 穰]

合成法

脂環式化合物は、一般に両端にお互いに反応してC-C結合を生成するような置換基をもつ鎖式化合物を適当な試薬と処理して、鎖の両端を結び付けて環をつくる方法により合成する。次の反応が脂環式化合物の合成によく使われる。
(1)鎖の両端を臭素置換されたα,ω-ジブロモアルカンを亜鉛、マグネシウム、ナトリウムなどの金属と反応させてシクロアルカンを合成する。この反応では原料のジブロモアルカンと同数の炭素をもつシクロアルカンができる(分子内ウルツ反応)。
(2)鎖の両端をカルボキシ基(カルボキシル基)で置換したα,ω-アルカンジカルボン酸のカルシウム塩やバリウム塩を熱分解すると、もとのカルボン酸に比べると炭素数が一つ少ないシクロアルカノンができる。これを還元するとシクロアルカンになる(ルジーチカ反応、ルチッカ反応ともいう)。
(3)鎖の両端をカルボン酸エステル基(-COOR)で置換されたα,ω-アルカンジカルボン酸ジエステルをナトリウムエトキシドなどの塩基と加熱すると、鎖の両端のカルボン酸エステル基の一方からアルコール1分子が脱離してα-ケトシクロアルカンカルボン酸エステルができる。このエステルからシクロアルカノンやシクロアルカンを誘導できる(ディークマン縮合)。
(4)α,ω-アルカンジカルボン酸ジエステルから金属ナトリウムなどを用いるアシロイン縮合によっても、シクロアルカンが合成できる(アシロイン縮合)。
(5)鎖の両端をシアノ基で置換されたα,ω-アルカンジカルボニトリルを、ナトリウムアミドを塩基として用いて環化させるとα-イミノシクロアルカンカルボニトリルができる。この化合物からシクロアルカノンやシクロアルカンを誘導できる(ソープ‐チーグラー環化)。
 (3)から(5)の反応は、通常の方法では収率が低く合成しにくい大環状シクロアルカンの合成に適している(図D)。
 脂環式化合物は多様性に富み、キュバン、アダマンタンなどの籠(かご)型化合物や、テルペンやステロイドのようにシクロヘキサン環やシクロペンタン環が多数縮合した構造をもつ化合物も知られている。天然脂環式化合物の生理活性を論ずるには、鏡像関係にある二つの光学異性体のうち一方のみが活性なので、光学異性の問題を無視できない。[向井利夫・廣田 穰]

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