日本大百科全書(ニッポニカ) 「スルツキー」の意味・わかりやすい解説
スルツキー
するつきー
Борис Абрамович Слуцкий/Boris Abramovich Slutskiy
(1919―1986)
ロシアの詩人。ドンバスの出身、ゴーリキー文学大学卒業。戦中派世代に属し、ケルンでのドイツ軍の捕虜虐殺を描いた『ケルンの窪地(くぼち)』(1945)、輸送船の沈没で海に消える軍馬の運命を歌った『海に沈んだ馬』(1956)などの詩で、民衆、人間の悲劇性への透徹を示し、口語的な文体とユニークな哲学的思想性の融合した独自の詩境を開いた。激越なスターリン批判の詩『支配者』『神』(1962)、ソルジェニツィンの「検閲廃止要求」の公然たる支持(1969)、また国外追放後、暗に彼をたたえる詩を発表したことなどでも知られる。詩集に『記憶』(1957)、『現代史』(1969)など。
[江川 卓]