ドンバス(読み)どんばす

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドンバス」の意味・わかりやすい解説

ドンバス
Donbass

正式名称はドネツ炭田 Donetsky Ugol'ny Basseyn。ドネツ盆地 Donetsky Basseynともいう。ウクライナ東部のドネツク,ルガンスク,ドネプロペトロフスクの3州,およびロシアのロストフ州にまたがる大炭田地帯。旧ドンバスは,ドネツク州を中心にドネツ川の南に約2万 3000km2の広がりをもつが,大ドンバスは西のドネプル川まで拡大し,東西 620km,南北 70~170km,総面積6万 km2をこえる。波状の平原とゆるやかな丘陵地帯から成り,最高点はドネツ丘陵の 367m。埋蔵量 (石炭は地下 1800mまで,褐炭は 600mまで) は 1280億t (1968推定) 。旧ソ連第1の炭田で,年間採掘量2億数千万t,旧ソ連の石炭産出量の3分の1強を占めていた。 1721年にこの地域で初めて石炭が発見されたが,開発は 19世紀初めまで行われず,本格的な開発は 1869年の鉄道開通後であった。第1次世界大戦前の 1913年にはロシアの石炭産出量の 87%を占めていたが,革命後クズバス (クズネツク炭田) その他の東部地域での開発が進むと,漸次その比重は減少した。採炭条件が悪く (坑道掘りの困難さと炭層の薄さ) ,産出量は 1970年代に減少したが,80年代に再び2億t台に漸増し,うちコークスが 40%を占める。石炭以外に天然ガス水銀岩塩,耐火煉瓦用粘土,石灰岩などの資源がある。ドンバスはまた,旧ソ連有数の工業地帯として知られていた。 1870年代より鉄冶金業が発達しはじめ,第1次世界大戦前はロシアの銑鉄の4分の3を生産していた。革命後,さらに重工業地帯として発展し,第2次世界大戦の戦災にもかかわらず復旧,その後の発達は著しかった。現在,ウクライナの鉄鋼業,重機械工業の中心地で,コークス製造による副製品と岩塩をもとに化学工業,セメント工業もあり,近年工業の一面的な発展を是正するため,食品工業や軽工業も導入されている。ドネツク,ルガンスク,ゴルロフカマケエフカクラマトルスクなど多数の都市が集中する都市集合地域であり,鉄道路線密度の高さはウクライナ第1である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドンバス」の意味・わかりやすい解説

ドンバス
どんばす

ドネツ炭田

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