日本大百科全書(ニッポニカ) 「スワティ」の意味・わかりやすい解説
スワティ
すわてぃ
Swati
南部アフリカのエスワティニ(旧、スワジランド)に住むバントゥー系農耕民。人口は約76万(1995)。東アフリカから南下してきたと考えられる遊牧民ングニの一派で、ズールーともっとも近縁である。エスワティニはスワティの伝統的王国であり、王母(クイーン・マザー)も王制のなかで重要な位置を占め、その居住地は王国の主都になる。おもな作物はトウモロコシ、カボチャ、落花生、メロンなどである。換金作物としてタバコと綿花を栽培する。家畜には牛、羊、ヤギなどを飼う。牛には非常に大きな価値が置かれ、王は「人々の雄牛」とたたえられる。喪に服している人や月経中の女性は牛から遠ざけなければならない。かつては首長によって共同の狩猟が組織され、象、ライオン、ヒョウなどを狩った。外婚的父系クラン(氏族)をもち(サブ・クランもしばしば外婚の単位となる)、子供たちは父のクラン名を与えられる。妻は婚入後も自分の父のクラン名を名のるので、夫の親族とは異なる集団に属しているという認識が明確である。5~7年ごとに形成される年齢組があり、各年齢組は固有の名、象徴、歌、小屋、役職をもつ。祖先崇拝が発達しているが、スワティの宗教は王制とも密接に結び付いている。雨も王権と関連する呪薬(じゅやく)によってコントロールされ、王は雨乞(あまご)い師でもある。数日間にわたって行われる複雑な王の即位儀礼であるインクワラは、アフリカの王権を理解するための貴重な事例となっている。
[加藤 泰 2018年8月21日]