日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゼネコン汚職」の意味・わかりやすい解説
ゼネコン汚職
ぜねこんおしょく
公共事業の入札などをめぐって総合建設会社(ゼネコン)が国会議員や知事、市長などに賄賂(わいろ)を贈り、摘発された事件。1993年(平成5)6月に仙台市長石井亨(とおる)(1925― )が逮捕されたのを皮切りに、同年末までに、収賄側が茨城県知事竹内藤男(ふじお)(1917―2004)、宮城県知事本間俊太郎(しゅんたろう)(1940― )ら8人、贈賄側は清水建設会長吉野照蔵(てるぞう)(1918― )ら日本を代表する大手建設会社トップを含む25人が逮捕された。さらに、1994年3月には、「埼玉土曜会」談合事件の告発見送りにからみ、鹿島建設から1000万円の賄賂を受け取った疑いで、前建設相中村喜四郎(きしろう)(1949― )が斡旋収賄(あっせんしゅうわい)容疑で逮捕された。国会議員に斡旋収賄罪が適用されたのは、1968年(昭和43)の日通事件以来26年ぶりのことだった。地方の首長をめぐる汚職は、建設業者が公共事業の指名を得るため知事や市長に賄賂を贈り、知事らは「天の声」によってこれら建設業者を指名するという構造。元自民党副総裁金丸信(かねまるしん)(1914―1996)の脱税事件で、10億円をこすゼネコンからのヤミ献金の実態が明らかになったことが、事件摘発の端緒になった。事件の背景としては、年間30兆円を上回る公共事業のうち都道府県や市町村の発注割合が20兆円も占め、自治体首長は業者からの賄賂攻勢にさらされていることや、首長の権限の強さ、業界に巣くう談合体質などが指摘されている。
[橋本五郎]