日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソコニシン」の意味・わかりやすい解説
ソコニシン
そこにしん / 底鰊
deep-sea herring
[学] Neobathyclupea japanotaiwana
硬骨魚綱スズキ目ソコニシン科に属する海水魚。沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、台湾南部の海域から知られている。体は細長く、側扁(そくへん)する。体高は体長の21~24%。目は著しく大きい。吻(ふん)は眼径より短く、眼径の約3分の2。口は普通大で、上顎(じょうがく)の後端は目の前縁を越える。下顎は上顎より前方に突出する。1個の細長い上主上顎骨がある。上顎に小さい円錐歯(えんすいし)からなる歯帯があり、側部の内側には顆粒(かりゅう)状の歯の幅広い歯帯がある。上顎の前方の内側に3~4本の肥大歯が1列に並ぶ。下顎歯は上顎歯よりすこし大きく、前端部で2~3列に、側面では1列に並ぶ。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)には逆V字形に1列に並ぶ歯がある。口蓋骨には1列に並ぶ犬歯状歯がある。鰓耙(さいは)は長く、上枝に2本、下枝に15~18本。側線は鰓孔の上端から尾びれ基底の中央部まで直線状に走る。鱗(うろこ)は大きくてはがれやすく、側線鱗(そくせんりん)数は32~33枚。背びれは1基で9軟条。体の後半部にあり、臀(しり)びれの第6軟条上方から始まり、その基底は著しく短い。臀びれは基底が長く、背びれ基底長のおよそ3倍で、1棘29~31軟条。背びれと臀びれは鱗で覆われる。胸びれは著しく長く、後端は背びれ起部下方まで伸びる。腹びれは小さく、胸びれ基底より前方にあり、1棘5軟条。体色は背側が紫褐色で、体側と頭部は淡灰色。腹部は淡青色。鰓蓋は濃青色。尾びれ基底は暗色。口蓋部は暗色で、舌と口の下面にまだら模様がある。鰓腔(さいこう)(えらが入っている空所)は下部を除いて暗色。沖縄トラフの水深約500メートルから、日本で初めてとれた。本種は大西洋種のBathyclupea argenteaに同定されていたが、2014年に新属新種にされた。
本種は、ニシン目ニシン科の種とはまったく関係がなく、腹びれが1棘(きょく)5軟条で、胸びれよりも前の喉位(こうい)にあることなどで、明らかに異なる。ソコニシン科には世界から2属9種が知られている。
[尼岡邦夫 2022年7月21日]