日本大百科全書(ニッポニカ) 「タコヤシ」の意味・わかりやすい解説
タコヤシ
たこやし
brush root palm
[学] Clinostigma ponapensis H.E.Moore,Jr.
ヤシ科(APG分類:ヤシ科)マガクチヤシ属の1種。幹は単一で直立し、高さ12~15メートル、径25~30センチメートル、根元からの高さ約1メートルの部分から多数の気根を傘状に出す。幹肌は平滑で、葉痕(ようこん)が環紋をつくる。葉は羽状葉、長さ4メートル、鮮緑色で光沢がある。小葉は60枚、披針(ひしん)形で長さ90センチメートル、幅5センチメートル、葉軸の両側に深く垂れる。葉軸は弓状に曲がり、葉全体の形がアサイヤシEuterpeに似る。またアサイヤシ同様、幹の芯(しん)になる棒状の若芽は食用となる(パルミットpalmitoと称する)。花は長さ1メートルの肉穂花序につき、雌雄同株の単性花で、花弁は白色。雄花は花糸の長さ2.5ミリメートル、中央に不稔(ふねん)の雌しべがある。雌花は鈍円錐(えんすい)形、径4ミリメートル、雌花の両側斜め上に雄花が1個ずつ密着する。萼(がく)は黒色。果実は杯(さかずき)状の扁楕円(へんだえん)形でほぼ倒円錐形をなし、周囲の横位置にくちばし状の柱頭痕を突出し、完熟すると黒紫色になる。種子も果実とほぼ同形で長さ2センチメートル、胚(はい)は底部にある。近縁のタコヤシモドキはチューク諸島(トラック諸島)原産で、全体の各部分がタコヤシより小さい。タコヤシと異なり芯芽は悪味が口中に残り、食用には向かない。
[佐竹利彦 2019年4月16日]