気根(読み)キコン

デジタル大辞泉 「気根」の意味・読み・例文・類語

き‐こん【気根/機根】

一つの物事にじっと耐える精神力。根気。気力。
「少しは長い手紙を書く―も付き」〈蘆花思出の記
仏語。すべての人に備わる、教えを受けて発動する能力・資質。根機。機。
[類語]根気忍耐力精根

き‐こん【気根】

植物の地表に出ている茎あるいは幹から出て、空気中に現れている根。タコノキトウモロコシなどにみられる。

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精選版 日本国語大辞典 「気根」の意味・読み・例文・類語

き‐こん【気根・機根】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏語。すべての人の中にあって、仏の教えを受けて発動する能力、資質。教えの対象としての、それを受けるものの能力。根機。
    1. [初出の実例]「極楽の荘厳心にうかびて忽に聖衆の来迎に預り給ける。其機根をはからひて上人もかくすすめけるにや」(出典:十訓抄(1252)一〇)
    2. 「歌道も仏教のごとく〈略〉心ざし浅き人は至らぬ道也。ただ機根の生熟によるとなり」(出典:ささめごと(1463‐64頃)下)
  3. 物事に堪えられる力。根気。気力。
    1. [初出の実例]「身体不調、気根如亡」(出典:明月記‐安貞元年(1227)一二月二日)
    2. 「気根(コン)づよふ勤てきた目で」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)京)
    3. 「少しは長い手紙を書く気根も附き」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉七)
  4. ( 「御気根に」の形で ) お気のままに、御自由にの意の、座を立つときの挨拶のことばにいう。
    1. [初出の実例]「『是りゃ是りゃ娘毎時(いつも)の様に酌は入ぬ〈略〉奥へ行きゃ行きゃ』『アイアイ夫なら御気根(キコン)に』」(出典:浄瑠璃・躾方武士鑑(1772)九)
  5. 植物の地上に出ている茎や幹の部分から生え、空気中にあらわれている根。その機能は、植物の種類によって異なる。〔現代術語辞典(1931)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「気根」の意味・わかりやすい解説

気根
きこん

根は普通は地中にあって植物体の地上部を支え、地中の水などを吸収したり、養分の貯蔵の働きをするが、地上茎からの不定根や地中の根の一部が地上に出たものが特別の働きをすることがあり、このような根を気根という。気根はその働きや形によって、付着根呼吸根支柱根、保護根、吸水根、同化根、根針(こんしん)などに分けられる。

 付着根は他物に付着する働きをもつ根で、キヅタ、ノウゼンカズラ、テイカカズラ、ツルマサキなど、よじ登り植物の茎から出た不定根やその根毛が他の植物体や岩に張りついて植物体を支える。

 呼吸根は湿地やマングローブ植物にみられ、不足する酸素を取り入れるための根で、内部に発達した通気組織をもつ。呼吸根は形態からさらにいくつかに分けられる。ヒルギダマシやマヤプシキでは地中を横走する根の側根が上向きに成長して地上または水面上に出るもので直立根ともいう。根冠(こんかん)はやがてなくなり、全体がコルク組織で包まれる。オヒルギ、ヌマスギなどでは波打って横走する根の波頭にあたる箇所の二次肥大が上側でとくに活発な扁心(へんしん)肥大をするため、こぶ状ないし棒状に突起するもので膝根(しっこん)という。ラワン類などでは横走する根の上側でとくに活発に肥大する扁心肥大を行い、板状となることから板根(ばんこん)という。この場合、何本かの根によって幹の基部から放射方向に幹を支える形に配列するが、板根は通気組織を多く含んで柔らかく、幹を支える力はない。

 支柱根は、地上茎からの不定根が下垂しながら成長し、地中に入ったあと植物体を機械的に支えながら、水などの吸収の働きもする根をいう。トウモロコシやタコノキなどでは太い不定根が斜め下に成長してそのまま地中に入るが、インドゴムノキの仲間では、垂れ下がっている根のうち地面に達したものが肥大成長して大きな支柱根となる。

 保護根は、たくさんの不定根が茎と密着しながら下垂して茎を覆う。堅い組織が多いため枯死したあともよく残って茎を保護するとともに、水分を保持するもので、木生シダのヘゴやマルハチにみられる。

 吸水根はクモランなど樹上に着生するラン科植物によくみられ、付着根も兼ねる場合が多い。クモランなどではコルク化しながら増殖した表皮細胞が蓄積した根被(こんぴ)という特別な組織で包まれて補強され、根被に雨水などを蓄えて、これを吸収する。

 同化根は、葉が退化したカワゴケソウ科植物やクモランなどにみられ、根の皮層などの細胞葉緑体を含んで光合成を行う根である。

 根針はある種のヤシ科植物などにみられ、不定根やその側根が木化して針状になったものをいう。

[西野栄正]


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百科事典マイペディア 「気根」の意味・わかりやすい解説

気根【きこん】

根は向地性をもち,地中で発達するのが一般であるが,地上の茎や幹から空気中に出る根もあり,それらを気根と総称し,種類によりいろいろな機能をもつ。つる性の茎を他に固着させる付着根(キヅタなど),先端が地中に入り体をささえる支柱根(タコノキなど),密生して幹を厚く包む保護根(ヘゴなど),雨露を急速に吸収貯蔵する吸水根(セッコクなど),沼沢地の植物が通気のため根の一部を突出する呼吸根(ラクウショウなど),水面に浮上する浮根(ミズキンバイなど)などがある。→
→関連項目アコウ(植物)イチョウ(銀杏/公孫樹)キヅタ(木蔦)タコノキデンドロビウムバンダポトス

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改訂新版 世界大百科事典 「気根」の意味・わかりやすい解説

気根 (きこん)
aerial root

は一般に向地性をもっており,地中で発達するものであるが,地上の茎から空気中に出る根があり,それらを気根と総称する。機能も構造も種によってさまざまで,支持根,吸収根といった区別がある。支持根の例としてはトウモロコシの茎の下方から出る根や,タコノキ,ヒルギ類などに典型的な例がみられる。ヒルギ類の気根は吸収根の役割も果たし,ラン科などの着生植物の根も吸収根である。キヅタなど,よじのぼり植物の根も支持根といえる。また葉緑体をもっていて同化作用を行っている気根もある。ヘゴの幹は中央に細い茎があってその周辺を多数の気根がとりまいてつくっているもので,この気根は保水の役割を果たしている。マングローブ植物のうちには地中を匍匐(ほふく)している根の一部が地上に突き出して通気の役割を果たす気根をもつものがあるが,これは背地性を示す例として,根の一般的な性質に合わない特別なものである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「気根」の意味・わかりやすい解説

気根
きこん
aerial root

植物の根は本来地中に伸長する器官であるが,茎や幹から空中に出る場合がある。これを気根という。地上の茎を支持するもの (トウモロコシ,タコノキなど) ,大気中に伸びて呼吸を助けるもの (イチョウ,ヒルギなど) ,樹木の表面や壁面などに着生したり,貯水したりするもの (キヅダ,セッコクなど) などいろいろの機能をもったものがある。

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普及版 字通 「気根」の読み・字形・画数・意味

【気根】きこん

根気。

字通「気」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の気根の言及

【根】より

…養分の貯蔵が異常に発達したものが貯蔵根storage rootで,アブラナ科のものでは胚軸と主根の基部がよく発達するし,サツマイモでは根(塊根tuber)そのものが肥大している。根が地上に現れたものを気根といい,通気のはたらきをするものもある。熱帯では,タコノキやガジュマルなどの茎から空中に垂れ下がった気根がよくみられる。…

※「気根」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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