改訂新版 世界大百科事典 「タノム」の意味・わかりやすい解説
タノム
Thanom Kittikachorn
生没年:1911-2004
タイの軍人政治家。貧困な下級軍人の家に生まれる。1929年陸軍士官学校卒業。57年友人サリットのひきで首相になるが,翌年サリットに譲る。63年のサリットの死後,再度首相に就任,約10年間の長期政権を保った。サリット路線以上の積極策は見いだせないが,アメリカの援助を背景にテクノクラートを活用し,工業化と社会開発を促進した。ただ政治的民主化への関心は低く,長期政権は息子ナロンの異例の登用などの閨閥政治を生んだ。この権力腐敗は73年10月の空前の請憲・反政府デモを引き起こし,国外亡命を余儀なくされた。76年ひそかに帰国し,出家して話題をまいた。首相時代,国民に呼びかけた〈善行の勧め〉は有名。
執筆者:赤木 攻
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報