日本大百科全書(ニッポニカ) 「タマゴタケ」の意味・わかりやすい解説
タマゴタケ
たまごたけ / 卵茸
[学] Amanita hemibapha (B. et Br.) Sacc.
担子菌類、マツタケ目テングタケ科の華麗な食用キノコ。高さ10~20センチメートル。傘は径8~15センチメートル、表面は真紅ないし濃朱色で平滑、周辺には放射状の溝筋(みぞすじ)がある。ひだは橙黄(とうこう)色で茎に離生する。茎は橙黄色ないし黄色で表面に濃い色の斑紋(はんもん)を帯び、上部に同色の膜質のつばがある。根元は厚い膜質の大きな白いつぼで包まれる。胞子は広楕円(こうだえん)形で非アミロイド。形態は猛毒のタマゴテングタケの仲間に似るが、タマゴテングタケ類では、傘の周辺に溝筋がなく、胞子はアミロイド。
タマゴタケは7~9月、広葉樹林に多く生える。分類学的には長い間、ヨーロッパのカイゼルキノコ、すなわちオウシュウタマゴタケA. caesarea (Fr.) Quél.と同種とみなされていたが、実は東南アジア系のA. hemibaphaであることがわかった。北方系のオウシュウタマゴタケは日本ではまだ発見されていない。
タマゴタケは傘が紅赤色のものを基本系とするが、黄色系と褐色系もある。黄色系のものをキタマゴタケsubsp. javanica Corner et Bas、褐色系のものをチャタマゴタケsubsp. similis (Boed.) Corner et Basという。これら三者は亜種の関係にある。キタマゴタケは日本の各地に発生するが、チャタマゴタケは日本ではきわめてまれで、大分県と熊本県で発見されただけである。
[今関六也]