日本大百科全書(ニッポニカ) 「タマゴテングタケ」の意味・わかりやすい解説
タマゴテングタケ
たまごてんぐたけ / 卵天狗茸
[学] Amanita phalloides (Fr.) Secr.
担子菌類、マツタケ目テングタケ科の猛毒キノコ。高さ10~18センチメートル。傘は径8~15センチメートル、表面は暗緑色ないしオリーブ褐色。ひだは白、茎は円柱状で上部に白い膜質のつばがあり、根元は膨らんで白い袋状のつぼで包まれる。胞子紋は白、胞子は類球形で、アミロイド。秋、針葉樹を交えた広葉樹林に生える。北半球の温帯以北に分布し、欧米に多い。英名には、death capの俗称がある。タマゴテングタケは日本ではまれで、近縁種のドクツルタケA. virosa Secr.、シロタマゴテングタケA. verna (Fr.) Vittが多い。これら3種の毒性はほぼ同じで、その死亡率は70%を超える。こうしたことから、この種のキノコの毒性については多くの研究がなされている。近縁種には、このほか、タマゴタケモドキA. subjunquillea Imai、コテングタケモドキA. pseudoporphyria Hongoがある。前者の傘は黄色、後者は褐黒色。中毒を避けるためには、傘の色は何色でも、茎の根元に袋状のつぼがあるキノコは絶対に食べないという配慮が必要である。
[今関六也]
毒成分
化学的には7または8個のアミノ酸からなる環状ペプチドで、前者をファロトキシン類phallotoxine、後者をアマトキシン類amatoxineといい、あわせてアマニタトキシン類と総称する。ともに数個の化合物が知られ、後者に属するα(アルファ)、β(ベータ)アマニチンamanitineは毒性がとくに強く、致死量は体重1キログラム当り0.1ミリグラム。重さ50グラムのキノコには約6.5ミリグラムの毒成分が含まれるので、体重60キログラムの人は1本食べれば死ぬことになる。
[今関六也]
中毒症状と治療
食後6~15時間で発病する。発病は激しい嘔吐(おうと)と下痢、腹痛から始まり、肝臓、腎臓(じんぞう)が冒され、けいれん、脱水症状といったコレラ症状を呈して死亡する。潜伏期間中に毒成分は体内に回っているので、速効的治療法はない。胃内洗浄、浣腸(かんちょう)によって毒物をすこしでも除いたり、血液透析のほか、ブドウ糖の静脈注射を日に4~5回行う。またチオクト酸の注射がよいともいわれる。
[今関六也]