色名の一つ。赤の濃い色。「あけ」ともいわれる。茜(あかね)で染めた濃い赤で、『延喜式(えんぎしき)』によると、深(ふか)緋は茜と紫根(しこん)、浅(あさ)緋は茜で染めるとしている。近世以降、紅(くれない)染めの黄色みのある鮮やかな赤を火色(ひいろ)の赤と混同して、緋とよぶようになった。そこでこれを古代の緋に対して、紅緋(べにひ)ともいっている。また、中国の伝説にある酒好きの猩々(しょうじょう)の顔色から、黒みを帯びた鮮やかな赤を猩々緋とよんだ。古代に、位を示す服色の当色(とうじき)として、孝徳(こうとく)天皇の大化(たいか)3年(647)に錦位(きんい)を真緋(あけ)と定め、持統(じとう)天皇の4年(690)に直位(じきい)を緋とした。また、養老(ようろう)の衣服令(りょう)で、四位が深緋、五位が浅緋とした。平安時代になると、深浅の区別がなくなり、四、五位の者は深緋を用いたが、後期以降、四位は黒を用い、五位のみ緋を用いた。
[高田倭男]