タマヤスデ(その他表記)pill-millipede

改訂新版 世界大百科事典 「タマヤスデ」の意味・わかりやすい解説

タマヤスデ
pill-millipede

倍脚綱(ヤスデ綱)タマヤスデ科Glomeridaeに属する節足動物の総称。敵に襲われたときや驚いたときにほぼ完全な球形になるのでこの名がある。世界各地に分布する。日本産は約10種あり,森林落葉の多いところにすむ。腐食性。外見は陸生等脚類のダンゴムシとよく似ておりまちがえられることが多いが,複眼がなく,体節や歩肢数も異なる。頭には短い1対の触角両側に数個の単眼がある。第2と第3背板は癒合して大胸背板となり,その後方に10胴節がある。ふつう全身は伸張したとき数mmの半球状であるが,熱帯地方にはピンポン球よりやや小さいほどの球体になる大型種もある。春に生殖期があり,卵は1個ずつ泥に包んで放置される。孵化(ふか)した1齢幼虫は3対の歩肢しかないが形は完全にタマヤスデ状で球状になることができる。雄の交尾肢が尾端にあるのはヤスデの中では特殊なのでネッタイヤスデ科などとともに後雄類としてまとめられている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タマヤスデ」の意味・わかりやすい解説

タマヤスデ
たまやすで / 球馬陸
pill millipede

節足動物門倍脚(ばいきゃく)綱タマヤスデ科Glomeridaeの陸生動物の総称。ユーラシア大陸の北部から熱帯地方までの森林の落葉層にすむ。手で触れると体を丸めて球形になるのでこの名がある。日本産は体長5~8ミリメートルで黒色、体側に斑紋(はんもん)のあるものもある。腹面は白く、雌は17対、雄は19対の歩肢がある。春に地表で交尾をし産卵する。卵は1個ずつ泥で塗り込められて地表や土の割れ目に放置される。かえった幼虫は3対の歩肢をもち、透明な皮膚をもっている。脱皮ごとに歩肢数が増え、約3年で成体になる。日本産は8種が知られている。甲殻類のダンゴムシとよく見間違えられるが、タマヤスデは黒色光沢があり、歩肢は7対ではないので腹側からみると簡単に区別することができる。人家の庭などにはほとんどいない。

篠原圭三郎]

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