インターネット広告の主流である広告手法。利用者が閲覧したサイト、検索履歴、購買履歴、全地球測位システム(GPS)による位置情報などのデータを基に、統計学や心理学を駆使して性別、年齢、趣味などの人物像を推定し、嗜好(しこう)等に的(ターゲット)を絞った広告を配信する。たとえば車に興味のある利用者に新車の広告、旅行に関心をもつ人に旅行関連広告、ライブ会場を訪れたら音楽関連広告を配信する、といった手法をとる。行動ターゲティング広告、興味関心連動型広告ともよばれる。ターゲティング広告がクリックされる確率は、通常のバナー広告より高く、事業者は広告効率を高めることができるうえ、従来接触がむずかしかった潜在的な顧客を掘り起こす効果も期待できる。このためターゲティング広告の単価はターゲティング以外の広告の2~10倍に達し、ネット広告の8割強を占め、屋外広告などにも活用されるようになった。閲覧画面と関連の高い通常のターゲティング型のほか、検索ワードに関連した広告を宣伝する「リスティング(検索連動)型」、モバイル端末の位置情報に連動した「ジオターゲティング(位置情報連動)型」などがある。ターゲティング機能を基に、広告をクリックすると初めて広告主に課金される「クリック型」や、商品購入などの成果に報酬を払う「アフィリエイト型」といった多様な広告を生むことになった。日本では、2005年(平成17)にグーグル日本語版がターゲティング広告を開始して、その後、急成長し、2018年には市場規模が1兆円を超えた。
一方で、ターゲティング広告に使われる購入履歴などは個人情報で、利用者が知らないうちにパソコンやスマートフォンを通じて事業者へ流れるのは、個人情報保護に抵触し、プライバシー侵害にあたるという問題も起きている。ヨーロッパ連合(EU)が2018年、個人データの収集・処理からヨーロッパ域外への持ち出しまでを広範に規制し、企業に厳格な情報管理を求める一般データ保護規則(GDPR)を施行。日本の公正取引委員会も2019年(令和1)、IT企業を独占禁止法で規制する指針案を公表し、自動表示された広告を消費者の意思で表示できなくする対策づくりに取り組んでいる。
[矢野 武 2021年2月17日]
(横田一輝 ICTディレクター/2019年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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