ターサ文化(読み)ターサぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「ターサ文化」の意味・わかりやすい解説

ターサ文化 (ターサぶんか)

エジプト先王朝時代の文化。中部エジプトのナイル東岸のデイル・ターサDeir Tasa,ムスタジッダ(モスタゲッダともいう)等を主要遺跡とする。バダーリ文化に先行する上エジプト最古の新石器文化として,イギリスの考古学者G.ブラントンが熱心に提唱したものであるが,現在では独立した文化とは考えられておらず,バダーリ文化の初期の段階とする意見が一般的である。口縁部が朝顔形に開き,胴部および口縁内部に白色の練土を詰めた刻文を持つ黒色磨研のビーカー形土器を特徴とする。土器胴部の刻文としては,縦方向の波形を持つものが多い。長方形パレット磨製石斧等も使用されていた。この時期の住居址は発見されていないが,人々は長円形の竪穴墓に埋葬されていた。しかし,この文化に関しては不明な点が多く,バダーリ文化の初期の段階であると見なすことさえも危険であるとする意見も強い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ターサ文化」の意味・わかりやすい解説

ターサ文化
ターサぶんか
Tasa culture

上エジプトの新石器時代後期の文化。前 4500~4000年頃と思われ,中部エジプトのナイル東岸にあるデル・ターサが標準遺跡。住民は半定住半遊牧の状態であったためか住居炉跡しか判明しない。墓は長円形の竪穴式で遺体屈葬,土器や象牙製,貝製の装身具が副葬された。土器は粗製が多いが,黒頂土器の古い型や,刻文に白色の顔料を埋めた幾何学文のある口縁部の開いた黒色土器が知られ,長方形のパレットも出土する。独立した文化期とせず,バダーリー文化の初期の段階とする説もある。 (→ターサ遺跡 )  

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