日本大百科全書(ニッポニカ) 「チェック・オフ制」の意味・わかりやすい解説
チェック・オフ制
ちぇっくおふせい
check off system
労働組合費徴収の一方法として、使用者が労働組合にかわって組合員労働者の賃金から組合費を天引し、それを一括して労働組合に渡すこと。組合費天引制ともいう。アメリカの労使関係から団結権保障の一環として成立した慣行で、日本では第二次世界大戦後から行われている。この目的は、組合自ら行うべき徴収事務を使用者に確実に行わせることによって、組合組織の維持と組合財政の確立に貢献することにある。天引制を採用するためには、当該事業所の労働者の過半数をもって組織する労働組合のある場合にはその労働組合、これのない場合には労働者の過半数を代表する者との書面による協定が必要である。国家公務員については禁止され、地方公務員については地方自治体の条例で認められている場合に限って許される。最近では、使用者が無償で組合費を徴収するのは労働組合の自主性を損なうとして、これを一方的に停止する事例が増えている。しかし、この制度は、労働組合の自由意思による協定に基づくものであり、また、組合費の滞納による除名や脱退を防いで、組合財政の確立に貢献している。使用者のねらいは、経費援助禁止の規定を逆用して、従来の労使慣行を破棄し、組合の財政基盤の弱体化を図ることにある場合が多い。
[三富紀敬]