議会,政党,教会といった組織体が有する制裁手段のひとつであり,規律違反や組織紊乱の理由で,特定の個人やグループからその組織成員としての資格を剝奪することを意味している。多くの組織体は多かれ少なかれ特定の目的と成員の資格要件を明示的,もしくは黙示的に有しているが,先にあげた議会,政党,教会等ではこれがとくに成文化されており,これに違反したと考えられる場合には除名処分が定められていることがある。たとえば日本の国会法は懲罰手段のひとつとして除名を規定し,議院に議員を除名する権限を与えている。とくに政党,党派や宗教団体においては,組織の基本理念と利害とに照らして除名の要件を定めていることが多い。組織内部での規律違反だけでなく,〈異端〉や〈偏向〉が除名処分の対象となることは,各種の宗教運動や政党活動,イデオロギー的組織でよくみられる。しかしこれらの場合,何が異端,偏向であるかを決めるのは組織内の主流派であることが多く,除名は異論派,反対者を組織内部から排除するメカニズムへと転化しがちである。この場合,除名は特定の組織体が一定の理念や利害をこれ以上許容しないことを意味するものにほかならない。また主流派と反対派とが相互に相手を除名しあうことにより,組織体が分裂することもまれに存在する。
除名がとくに大きな政治的意味をもつのは,イデオロギー的基盤が強固な政治組織,とくに社会主義,共産主義運動や特定のイデオロギーを標榜する一党制国家においてであり,その場合の除名は〈粛清〉とよばれている。1927年のトロツキーのロシア共産党からの除名や,1948年のコミンフォルムからのユーゴスラビア共産党の除名などが有名である。
執筆者:下斗米 伸夫
〈じょめい〉ともいう。有位者の位階・勲等すべてを剝奪し,6載,すなわち7年目の後でなければ再び叙位されないとする律の処分。有位者なるがゆえに,とくにその責任を問うて主刑に付加する刑に,除名,免官,免所居官(総称して除免という)があるが,除名がこの中で最も重い。除名に該当する犯罪は,八虐,故殺人,監守内(地位権限を利用した)の姦・盗・略人(人身売買)・受財枉法(収賄しかつ法をまげる),および死罪,五流に相当する犯罪である。除名に処せられた者は,位田,職田,賜田等すべて没収され,庶民と同じく課役を負担するが,歳役は実役の代りに庸を納め,かつ雑徭や兵役を免除される。刑部省や諸国が除免官当を断じた場合は,太政官の再審を要し,さらに勅裁を仰ぐが,除名の裁可はとくに論奏式による。除免官当すべき者の位記は,天皇裁可の日,太政官において毀棄し,式部省や兵部省等に保存されている位記の写しにも,〈毀〉字をその上に記す。除名は6載の後,文位は選叙令,勲位は軍防令の規定により再び叙位される。
執筆者:小林 宏
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…有位者の位階・勲等すべてを剝奪し,6載,すなわち7年目の後でなければ再び叙位されないとする律の処分。有位者なるがゆえに,とくにその責任を問うて主刑に付加する刑に,除名,免官,免所居官(総称して除免という)があるが,除名がこの中で最も重い。除名に該当する犯罪は,八虐,故殺人,監守内(地位権限を利用した)の姦・盗・略人(人身売買)・受財枉法(収賄しかつ法をまげる),および死罪,五流に相当する犯罪である。…
※「除名」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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