改訂新版 世界大百科事典 「ツノモ」の意味・わかりやすい解説
ツノモ (角藻)
Ceratium
ひし形,碇形または線条に近い形の渦鞭毛藻の1属で,体の全面は鎧板におおわれる。多くの種類では,上殻は上方に単一の突起として長くのびるのに対し,下殻は2本ないし3本の角状の突起を発達させる。この属は形態のちがいにより,四つの亜属に分類される場合が多い。すなわち,下殻の角状突起が後方に伸び,体形がひし形に近いBiceratium亜属,下殻の角状突起が左右に伸び,体形が碇形のOrthoceratium亜属,全形は線条で,体長が体幅の10倍以上になるAmphiceratium亜属,および上殻が円盤状にふくれ,角状突起のないArchaeoceratium亜属である。この属の生殖には二分裂による無性生殖と接合による有性生殖とが知られる。種類数が多く,生育場所も広範囲で,淡水,汽水,さらに海に及ぶ。しばしば大発生して赤潮を形成することがある。
執筆者:千原 光雄 ツノモは2本の鞭毛を用いて運動するところから動物学では原生動物門,有色鞭毛虫綱に分類している。ほとんどの種類が熱帯域や温水域の海中で浮遊生活をするが,キタツノオビムシCeratium arcticumやナガツノオビムシC.longipesのように北海道の冷水域にすむものもある。各種海産動物の重要な飼料源になっている。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報