改訂新版 世界大百科事典 「ティコピア島」の意味・わかりやすい解説
ティコピア[島]
Tikopia Island
南西太平洋,ソロモン諸島東部の離島。南緯12°30′,東経168°30′に位置する。人口1000(1970)。アヌタ,オントン・ジャワ,レンネル,ベロナなどの島々とともに,メラネシア地域における辺境ポリネシアPolynesian Outliersを形成する。5km×3kmの卵形をした古い火山島で,標高366mの噴火口をもつ。島の周囲はサンゴ礁に囲まれ,南部には湖がある。住民は長身,明褐色の肌をしたポリネシア人で,南東と北西の海岸部に集中して居住する。主食はタロイモで,ヤムイモ,バナナ,サゴヤシなども重要である。動物タンパク質は海に大きく依存する。ポリネシアに典型的な父系社会であり,夫方居住様式をとる。氏族間での外婚制はない。島には首長と平民との身分制が発達している。四つの氏族があり,それぞれ1人の首長をもち,さらにそのなかから1人の大首長がきめられており,全体として政治的・宗教的な階層社会を形成している。祖先霊や神に対する信仰とともに,タプtapuとよばれる観念が発達している。タプは一方で首長や神の聖性をあらわすとともに,禁忌・禁止をもあらわす。伝統的に成人は刺青をし,樹皮布をまとい,ヤシの葉でふいた家屋に居住していた。イギリスの社会人類学者ファースが1920年代後半に集中的な野外調査を行い,すぐれた民族誌を残している。
執筆者:秋道 智彌
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報