樹皮布(読み)ジュヒフ

デジタル大辞泉 「樹皮布」の意味・読み・例文・類語

じゅひ‐ふ【樹皮布】

樹皮を水に浸して柔らかくし、木槌きづちで打ち伸ばして作った布。

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改訂新版 世界大百科事典 「樹皮布」の意味・わかりやすい解説

樹皮布 (じゅひふ)

樹皮の内側の木質部から作る紙状の布である。樹皮を採取する原木はカジノキ,パンノキ,イチジクなどおもにクワ科の植物で,その他,シュロ,ツリーハイビスカスも素材となる。これらの植物の幹の表皮をとり除いた黄白色の内皮をはぎとる。製法は比較的簡単で,まずはがしたものを水につけてしなやかにするが,まれに煮る地域もある。次に木の台の上に置き,木づちでたたいて好みの厚さに平均的に伸ばす。後は広げて日に乾かすだけである。大きな長い布が必要な場合には,継ぎ目を重ねて強くたたけばいくらでも継いでゆくことができる。にかわづけして大きな布にすることもある。インドネシア,ポリネシア,中央および赤道アフリカの熱帯森林地帯に分布する。最も美しくよく知られているものはポリネシアの〈タパtapa〉と呼ばれる樹皮布である。品質がよく,木版型紙,手描きなどの手法を用いて,茶や黄褐色また黒の植物性染料で幾何学的文様を染める。衣料として用いるほか,覆布,敷布,包布その他装飾用としても用いられる。欠点としては雨にもろく,しなやかさを欠くことである。丈夫でないために使い捨てにされ,多量に必要となる。ポリネシアやインドネシアでは,とくにタパ用のクワ科の植物が栽培される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「樹皮布」の意味・わかりやすい解説

樹皮布
じゅひふ

樹皮を打ち伸ばしてつくった布。毛皮と並んでもっとも原始的な衣服材料の一つ。インドネシア、太平洋、アメリカ、中南米などの熱帯地域でみられ、なかでもポリネシアではもっとも発達し、広くタパという名称で知られている。

 日本でも、古くからある「たふ」「たく」などの名称は、タパを伝えたものといわれる。製法は、クワ科植物の樹皮をはぎ、水に浸(つ)けて柔らかくしておき、木槌(きづち)でたたいて伸ばし、布状とする。そして木版に染料をつけて印花し、模様をつける。現在、樹皮布と同様な原理でつくられるものに不織布がある。

[角山幸洋]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「樹皮布」の意味・わかりやすい解説

樹皮布
じゅひふ

樹皮を打ち延ばしてつくった布。獣皮,羽毛,茎葉などと並んで最も原始的な衣料とされる。かつて南太平洋圏の部族の間で広く用いられ,いまも一部にみられる。最上部の堅い皮を除き,内皮を煮て水にさらし,木や石の槌で打ち延ばしてつくる。材料にはコウゾその他のクワ科植物の樹皮が適している。

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