樹皮の内側の木質部から作る紙状の布である。樹皮を採取する原木はカジノキ,パンノキ,イチジクなどおもにクワ科の植物で,その他,シュロ,ツリーハイビスカスも素材となる。これらの植物の幹の表皮をとり除いた黄白色の内皮をはぎとる。製法は比較的簡単で,まずはがしたものを水につけてしなやかにするが,まれに煮る地域もある。次に木の台の上に置き,木づちでたたいて好みの厚さに平均的に伸ばす。後は広げて日に乾かすだけである。大きな長い布が必要な場合には,継ぎ目を重ねて強くたたけばいくらでも継いでゆくことができる。にかわづけして大きな布にすることもある。インドネシア,ポリネシア,中央および赤道アフリカの熱帯森林地帯に分布する。最も美しくよく知られているものはポリネシアの〈タパtapa〉と呼ばれる樹皮布である。品質がよく,木版や型紙,手描きなどの手法を用いて,茶や黄褐色また黒の植物性染料で幾何学的文様を染める。衣料として用いるほか,覆布,敷布,包布その他装飾用としても用いられる。欠点としては雨にもろく,しなやかさを欠くことである。丈夫でないために使い捨てにされ,多量に必要となる。ポリネシアやインドネシアでは,とくにタパ用のクワ科の植物が栽培される。
執筆者:鍵谷 明子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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