日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティタノテリウム」の意味・わかりやすい解説
ティタノテリウム
てぃたのてりうむ
titanotherium
[学] Menodus
化石でのみ知られている絶滅した哺乳(ほにゅう)動物の一グループ。ウマの仲間で、分類上は奇蹄(きてい)目ウマ亜目ブロントテリウムBrontotherium科に属している。奇蹄類としては最大のもので、肩の高さが2.5メートルもあり、草食性の森林生活者であったとされている。ゾウのように巨大な体つきをしていたウマの仲間で、ギリシア神話の巨人族で力の強いティタンTitan、獣(けもの)を意味するテールtherとをあわせ、ティタノテリウムという名前がつけられた。また、ブロントテリウムともよばれるが、これは雷を意味するギリシア語のブロンテbronteと、獣のテールとをあわせたものである。中国では「雷獣」と訳されている。しかし、名称の先取権の関係で、学名としてはメノーダスMenodusが使われている。
先祖は、約5000万年前の始新世に北アメリカ大陸にいた小形のエオティタノプスEotitanopsで、その子孫たちは、およそ3500万年前の漸新世に、北米大陸、東アジアからヨーロッパ東部にかけて広く分布を拡大した。また、それとともに体の大きさが急速に巨大化したことが化石から知られ、生物進化にみられる大形化の例として注目されてきた。ティタノテリウムの体は巨大ではあったが、頭は細長く、脳は小さかった。鼻の先にY字あるいはV字形の骨質の角(つの)をもち、その角はキリンの角のように皮膚で覆われていたと考えられている。歯の形はきわめて単純であり、柔らかな植物しか食べることができず、漸新世後期の地球環境の大きな変化に適応できず絶滅した。
[亀井節夫]
『デイビッド・ピーターズ著『巨大生物図鑑』(1987・偕成社)』▽『エドウィン・H・コルバート、マイケル・モラレス、イーライ・C・ミンコフ著、田隅本生訳『脊椎動物の進化』原著第5版(2004・築地書館)』▽『冨田幸光著、伊藤丙雄・岡本泰子イラスト『絶滅哺乳類図鑑』新版(2011・丸善)』