改訂新版 世界大百科事典 「ティブルス」の意味・わかりやすい解説
ティブルス
Albius Tibullus
生没年:前50ころ-前19ころ
ローマの抒情詩人。騎士身分の家に生まれ,当時マエケナスとともに文芸を保護していた軍人政治家メッサラMarcus Valerius Messala Corvinusのグループに属していた。メッサラの勝利をたたえる祝勝歌も彼の詩集には含まれている。古代より伝わるティブルスの詩集は3巻よりなるが,現在ではそのうち1,2巻のみが真作とされている。彼は,恋人デリア,ネメシス,少年マラトゥスにあてた恋愛詩のほかに,田園における生活をたたえる詩などを書きのこした。その恋愛詩の特徴は,複雑な感情の流れを平明かつ都会的な優雅さで表現した点にあり,ガルス,プロペルティウス,オウィディウスと並んで,代表的なラテン恋愛抒情詩人の一人と評価されている。ティブルスはエレゲイアの韻律を用いた詩人たちの中で〈最も洗練された〉詩人であると,1世紀の修辞家クインティリアヌスは伝えている。
執筆者:平田 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報