ネメシス(読み)ねめしす(英語表記)Nemesis

翻訳|Nemesis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネメシス」の意味・わかりやすい解説

ネメシス
Nemesis

ギリシア神話復讐女神。夜ニュクスの子とされ,度はずれたすべての行為に対する神罰を神格化した存在。特に,神をないがしろにする人間の傲慢に容赦なく手きびしい罰を与えると信じられた。一伝によれば,あるときゼウス求愛を逃れようとして,さまざまに変身したが,最後にがちょうに姿を変えたところを,白鳥に変身したゼウスに捕えられて犯され,1個の卵を産んだ。これを羊飼いたちが見つけてレダに与え,それから生れたのがヘレネディオスクロイで,それゆえ彼らのほんとうの母は,普通信じられているようにレダではなく,実はネメシスであるという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネメシス」の意味・わかりやすい解説

ネメシス
ねめしす
Nemesis

ギリシア神話の女神。不当な事柄に対する義憤、とくに人間の高慢な言動に対する神の怒りと、神罰としての報復の擬人化と解釈されている。ヘシオドスによれば、この女神はニクス(夜の神)の娘とされているが、女神アイドス(羞恥(しゅうち))とともに「鉄の時代」になると人間界を見捨ててしまう。また白鳥に身を変じたゼウスと交わって、ヘレネとディオスクロイを生んだとも伝えられる。ネメシスは文学、とくに悲劇にしばしば登場し、その性格が深化されている。崇拝の対象としては紀元前6世紀ごろにすでに祭儀が執り行われていたといわれ、アッティカ地方のラムヌスにある神殿は有名であった。

[伊藤照夫]

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