改訂新版 世界大百科事典 「テレシネ装置」の意味・わかりやすい解説
テレシネ装置 (テレシネそうち)
telecine equipment
映画フィルムを映像信号に変えて送出するための装置。フィルム送像装置ともいう。テレシネということばはテレビジョンとシネマとの合成語であり,テレシネとはテレビジョン系における,フィルムからビデオへの変換機能を有する入力装置である。
現在のテレシネの方式は,(1)撮像管テレシネ,(2)FSS(flying spot scannerの略)テレシネ,(3)CCDテレシネ,(4)レーザーテレシネの4種類に分類され,それぞれ走査方式を異にしている。
(1)は単純に映写機とテレビカメラとを組み合わせたもので,フィルムの画像を撮像管の光電面に映写して,電子ビーム走査によって読み出す方式のテレシネであり,毎秒フィールド数60のNTSC方式を採用している日本,アメリカ,カナダで主として使用されている。映画の毎秒コマ数24をテレビジョンの毎秒フィールド数60に変換するには前者の2コマを後者の5フィールドに対応させねばならない。このため,ある1コマを2フィールドで読み出し,次の1コマを3フィールドで読み出す,いわゆる2-3読出しが一般に行われる。
(2)は残光時間の短いブラウン管を光源とし,図1に示すように,その均一なラスター(走査線でかかれた画面)の像をフィルムの画面上に光学的に結像させ,その透過光を光電変換するしくみで,光スポット走査によって読み出す方式のテレシネであり,毎秒フィールド数50のPAL,SECAM方式を採用している国で主として使用されている。毎秒コマ数24を毎秒フィールド数50に不自然さなく変換するのは困難なので,映画フィルムを毎秒コマ数25で走行させている。このため映画の音楽のピッチが約4%高くなるのが少し問題視されている。
(3)はマイクロエレクトロニクスの進歩によって生まれた新しいテレシネであり,図1において,ブラウン管の代りに線状の光源を,光電子増倍管の代りにCCDのラインセンサーを置き,受光素子によって純電子的に水平走査を行うことを特徴とするテレシネである。
(4)はレーザー光線を微小スポットに収束してフィルム画面を直接走査して読み出す,もっとも新しい,もっとも高画質のテレシネであり,高品位テレビ用テレシネとしてNHK放送技術研究所によって開発された。レーザー光源には,ヘリウムネオンレーザー(赤),アルゴンイオンレーザー(緑),ヘリウムカドミウムレーザー(青)の3本,いずれも小型の空冷レーザーが用いられている。水平偏向用回転多面鏡は面数25,直径40mm,回転数毎分8万1000であり,空気軸受が採用されている。
執筆者:種田 悌一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報