改訂新版 世界大百科事典 「空気軸受」の意味・わかりやすい解説
空気軸受 (くうきじくうけ)
air bearing
油の代りに空気を潤滑剤として用いる軸受。アルゴン,窒素,二酸化炭素などの気体を用いる軸受もあり,これらを総称して気体軸受と呼ぶ。気体の粘性は油のそれよりはるかに小さいので,摩擦の極微な軸受が期待でき,高速回転に適し,高速ターボ機械,宇宙機器,精密測定機器などに重用されている。空気軸受はその作動原理から動圧軸受と静圧軸受に分類される。前者は軸の回転に伴って周辺の空気を軸受すきまへ誘いこみ,圧力を上昇させて負荷能力を得る形式で,ふつうの円筒軸受では高速でふれまわり振動を起こしやすいので,軸受を分割してそれぞれを傾斜可能に支持したティルティングパッド軸受,軸受面上のスパイラル溝によって空気を渦巻ポンプのように加圧するスパイラル溝軸受,あるいは軸受面を可撓なフォイルで構成するフォイル軸受などの特殊な設計の軸受が実用に供される。静圧軸受は外部の圧縮機で加圧された空気を強制的に軸受すきまへ供給する形式で,軸受の剛性を高めるためには給気経路に流体絞りを用いる。流体絞りの種類には,小径供給孔による自成絞り,供給孔に装着したオリフィスまたは毛細管による絞り,給気スロットによるスロット絞り,軸受面に浅い溝を掘って抵抗とする表面絞り,多孔質軸受の背面より給気する多孔質絞りなどがある。静圧軸受は,軸が回転しなくても供給圧力の分布によって浮遊状態が得られるから,きわめて低速の運転にも適し,回転精度も高い。
執筆者:森 美郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報