改訂新版 世界大百科事典 「デターディング」の意味・わかりやすい解説
デターディング
Henri Wilhelm August Deterding
生没年:1866-1939
オランダ生れのイギリスの実業家。国際石油トラスト,ロイヤル・ダッチ・シェル・グループの育成者。オランダ貿易金融会社の社員としてペナンに駐在していたが,ロイヤル・ダッチ・ペトロリアム社のケスラー社長に手腕をかわれ,1896年同社へ移り,1900年同氏病没後,社長に就任。アメリカのスタンダード・オイル社のアジア市場進出に対抗するため,02年,ロイヤル・ダッチ,シェル運輸貿易,ロスチャイルド3者の出資によるアジア・オイル社を設立し,その社長となる。07年には,バタビア・ペトロリアムをハーグに,アングロ・サクソン・ペトロリアムをロンドンに設立し,両社の株式のそれぞれ60%をロイヤル・ダッチが,40%をシェルが所有することを定め,アジア・オイルを含めて3社を支配する巨大な国際石油トラスト,ロイヤル・ダッチ・シェル・グループの結成に成功した。さらに,スタンダード・オイルの独占解体の好機をとらえ,12年アメリカ中南部へ進出,翌年カリフォルニア油田を買収するなど,積極政策を展開した。イギリス系石油資本を率いてアメリカ石油資本と徹底的に対抗し,〈石油界のナポレオン〉と称せられた。
執筆者:日高 千景
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報