日本大百科全書(ニッポニカ) 「デンプン作物」の意味・わかりやすい解説
デンプン作物
でんぷんさくもつ
デンプンならびにその加工品およびアルコール製造原料などを効率よく経済的に量産できる栽培植物の総称。植物は葉の中に、光合成により同化デンプンを生成し、体内を移行して、種子、茎、根などに貯蔵デンプンとして蓄積する。その量が著しい種類がある。
デンプン作物とは、人間が食糧とし、またデンプン生産を目的として数千年にわたり改良を加えてきたものである。イネ、ムギなどは穀類として取り扱われているが、デンプン作物でもある。それらを野生のものと比較すると、穀粒が脱落しにくく、植物体や穂が直立し、開花、成熟期は整一で短く、単に収量の増大のみならず栽培管理や収穫が容易となっている。サツマイモ、ジャガイモなどのいも類では、地表に近いところに、しかも著しく肥大した塊根または塊茎が着生するようになった。したがって、穀類、いも類ともに収穫作業が容易で、収穫量が増大し、デンプン含有量も高くなった。
そのほか、エチオピアでは穀類としてのテフ、ペルーではいも類としてオカ、ウルコ、マシュアなどがある。野生のものにもクズ、カタクリなどのように、食用のデンプンが生産され、キカラスウリの根からは天花粉として用いられる有用なデンプンが得られている。
[山本三夫]