トラウトマン工作(読み)トラウトマンこうさく(英語表記)Trautmann's mediation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トラウトマン工作」の意味・わかりやすい解説

トラウトマン工作
トラウトマンこうさく
Trautmann's mediation

中国駐在ドイツ大使オットー・トラウトマンが斡旋した,日中戦争早期解決のための調停工作。不拡大論者であった石原莞爾参謀本部第1部長が馬奈木敬信中佐に対し,旧知間柄にあったトラウトマンとの接触を命じ,日中和平の仲介を依頼した裏面工作に始まる。公式には 1937年 11月2日に広田弘毅外務大臣が駐日ドイツ大使 H.ディルクセンを介して交渉を開始。日本の和平条件をトラウトマンから伝えられた蒋介石は,11月5日ブリュッセル会議が開催中であることを理由に交渉をいったん拒絶したが,12月2日あらためて応じる旨語った。しかし,その後南京が陥落したことから,近衛内閣は賠償と領土割譲を含む高圧的な和平条件をトラウトマンを通じて 12月 26日に通告,蒋政権からは回答がなく,翌 1938年1月 14日の閣議が交渉打ち切りを決めたため,調停は不成功に終わった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報