朝鮮民謡の曲名。トラジは朝鮮語でキキョウ(桔梗)の花を意味する。朝鮮半島では北部の山野に比較的多く自生する多年草で,初秋に幅ひろい白の花びらをもった花が咲く。白いトラジは薬草ともなり,ゴボウ状の根は食用とする。民謡《トラジ》の歌は,正確には《トラジ打令(タリヨン)》と呼び,《アリラン》と共に朝鮮の二大民謡として世界的に知られている。明快な3拍子のリズムが特徴的で,多くの民謡のなかでは比較的新しい。黄海道の殷栗地方の民謡にも,京畿道の立唱の《山打令》にも《トラジ打令》という曲があるが,互いに特別な関係はない。〈トラジ トラジ 白いトラジ 深い山奥の山川の白いトラジ 1,2本の根を掘っただけで 竹のかごが一杯になる〉という歌詞から始まる。2番以下の歌詞に,江原道,金剛山,殷栗などの地名が出てくるが,江原道で歌われていた《アリラン》の一つに類似する旋律をもっており,《トラジ》はこの曲を源流としている。
執筆者:草野 妙子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…キキョウ科には珍しい浅黄色の花色もあったと伝えられる。文学作品では,《枕草子》にも草花の代表格として紹介されており,朝鮮ではキキョウをトラジといい,《トラジ》は朝鮮における代表的な民謡の一つである。 根や若芽は食べられる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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