ほかの生物の遺伝子を人為的方法によって導入したり、遺伝子を組み換えて作出された動物。成長ホルモン遺伝子を導入して通常のマウスの2倍に成長させたスーパーマウスはよく知られているが、トランスジェニック動物は医学・生物学など広範囲の研究・開発分野で利用されている。代表例としては、認知症や遺伝病の発症の仕組みの解明や、新薬開発、薬のスクリーニングへの利用を目的とした疾患モデル動物、また遺伝子の導入によって乳汁中にヒト血清アルブミンなどの有用タンパク質を生産させる動物工場用のウシやブタなどがある。さらにトランスジェニック動物には、特定の遺伝子を欠損(破壊)させて機能を発現しないようにしたノックアウト動物(主としてノックアウトマウス)も含まれる。通常のマウスと比較することで、破壊された遺伝子の機能や働きが明らかになる。また目的の遺伝子にクラゲやホタルの発光遺伝子を連結して導入することで、遺伝子の働きをより明確に理解する手法も導入されている。
[飯野和美]
『山村研一・勝木元也・相沢慎一・中辻憲夫編『トランスジェニック動物』(1997・共立出版)』▽『結城惇著『トランスジェニック動物の開発』普及版(2001・シーエムシー)』▽『東条英昭著『トランスジェニック動物』(2004・朝倉書店)』
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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