日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノックアウトマウス」の意味・わかりやすい解説
ノックアウトマウス
のっくあうとまうす
knock-out mouse
特定の遺伝子のみを人工的に欠如(ノックアウト)させたマウス。これまで実験的に調べられ、生体内での働きが推測の域にあった遺伝子機能の解明などに役だつ実験動物として、医学、生物学などの分野で注目を浴びており、生産、販売を事業展開する企業も出現した。特定遺伝子を壊したマウスの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を受精卵に導入して、正常な細胞とノックアウトされた細胞とが混じったキメラマウスをつくり、何代か掛けあわせて作成されることが多い。すでに脳の情報伝達、筋肉形成に関与する遺伝子などを欠如させた数百種類のノックアウトマウスがつくられているとも報告されており、アルツハイマー病、パーキンソン病など難病のモデル動物や遺伝子治療、新薬の開発への利用が期待される。
[飯野和美]
『山田一之編『遺伝子と行動――ミュータントマウスの作製と行動変異の探究』(2003・ナカニシヤ出版)』▽『東条英昭著『トランスジェニック動物』(2004・朝倉書店)』