改訂新版 世界大百科事典 「トロフォニオス」の意味・わかりやすい解説
トロフォニオス
Trophōnios
ギリシア伝説で,ボイオティア地方のレバデイアの神託所の主。オルコメノス王エルギノスErginosの子。兄のアガメデスAgamēdēsとともに建築家として知られ,デルフォイのアポロン神殿,マンティネイアのポセイドン神殿などを建てた。その後,エウボイア島対岸の町ヒュリアの王ヒュリエウスHyrieusの宝蔵を造ったとき,二人は土台石のひとつに細工をしておき,あとでたびたび忍び入って宝物を盗み出した。このため王は工匠ダイダロスの勧めでわなをかけると,アガメデスがこれにかかり,トロフォニオスは身元が知れないように兄の首を切り取って逃げたが,レバデイアまで来たとき,大地が開いて彼をのみこんだという。のち彼は神としてまつられ,同地の深い洞窟内にその神託所が設けられた。この神託所は前6世紀以降有名となり,リュディア王クロイソス,マケドニア王フィリッポス2世などの有力者も神意伺いの使者を遣わした。なお,ヘロドトスの《歴史》第2巻には,上記の首切り話に酷似したエジプト王ランプシニトスRhampsinitos(ラテン名でランプシニトゥス)の宝蔵の物語がある。
執筆者:水谷 智洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報