日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドッグセラピー」の意味・わかりやすい解説
ドッグセラピー
どっぐせらぴー
人の心や体の病気の治療などを目的に、適切に、イヌを介在させる補助療法。動物を介在させて人の治療を行うことを動物介在療法(アニマル・アシステッド・セラピーAnimal Assisted Therapy略してAAT)とよぶ。ドッグセラピーは、介在動物をイヌに限定した人間の補助療法のひとつである。
なお、近年日本では「アニマルセラピー」ということばを耳にする機会は多くなっており、和製英語として用いられているが、「アニマルセラピー」は諸外国では動物を治療する場合に使われており、人を治療する場合は正しくはアニマル・アシステッド・セラピー(動物介在療法)とよぶ。
[柴内裕子]
動物の適性
動物介在療法における介在動物は、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、小鳥などが中心であるが、参加数はイヌが圧倒的に多い。日本では、小児病棟や重症病棟での活動はほとんどイヌを用いる。こうした活動犬(セラピー犬therapy dog)は、すべて一般家庭の飼い犬で、健康で幸せに暮らしており、飼い主とともにドッグセラピーの世界基準を学んだ上でボランティアとして参加する。イヌの行動学的適性としては、(1)人が好き、(2)どこでも落ち着いていられる、(3)異種の動物にも異常な関心をもたない、(4)周囲に迷惑をかけないというマナーが守れること、が求められる。獣医学的適性としては、(1)定期的身体検査と予防処置を行う、(2)訪問先の基準(腸内や口腔の細菌検査など)を満たすこと、が求められる。その他の適性として、(1)室内飼育、(2)活動前のリチェック、(3)陽性強化法(褒めてしつける方法)で育てていること、などがある。飼い主は、活動の理念を学習し、パートナーとしての動物を確実にコントロールできることが求められる。
[柴内裕子]
作業療法への活用例
ドッグセラピーを作業療法に活用する具体例として、以下のような内容がある。
(1)十分にサポートされた患者が投げるボールを、待機するセラピー犬が追いかけ、キャッチする、拾って持ち帰る。これは、患者の手の動きや関節の可動範囲を広げる目的で行う。
(2)歩行器を用いた患者が、セラピー犬のリードを持ちながら歩行し、楽しみながら歩行距離を延ばしていく。
動物好きの患者は、自分の行動に敏感に反応してくれるセラピー犬の存在に、楽しく勇気づけられ、より能動的になり、活気をもって治療に励むことができる。
[柴内裕子]