翻訳|aptitude
ある特定の職業や学業を効果的に遂行するのに必要な能力や技能を,個人の特性の問題としてとらえる際に用いられ,その潜在的可能性や将来の成功度予測が,そこで論議される。たとえば入学試験は,広い意味での適性検査で,そこでは受験者の学力について入学後学業に耐えうるかどうかの可能性が測定される。またさまざまな適性検査(職業適性検査,進学適性検査,レディネス・テストなど)が開発され,個人の潜在的可能性の予測のために用いられている。しかし現実には,ある特定の職業や学業に従事する前に,その仕事を効果的に遂行できるかどうかを測定し,予測することはきわめてむずかしい。それは,予測とはいっても,可能性を直接測定することはできず,現在の力から判断せざるをえないことから,すでに学習した知識や技能によって,その結果が左右されるからである。その点からいえば,適性検査と学習結果をはかるアチーブメント・テストとを完全に区別することはできない。最近では適性を単なる知識や技能の側面だけではなく,意欲や人格的な要因も加味してとらえるようになってきているが,これも仕事に対する興味や関心の強さやその仕事を遂行するのに必要な人間関係を保持できる力などのほうが,将来の職業などで自己の能力を発揮できるかどうかに影響があることがわかってきたからである。また適性を〈ある課題の学習のために子どもによって必要とされる時間量〉とする学者もあるように,適性を固定的で素質的な因子によるよりも,教授や学習によって変わりうるものととらえる考え方も広まってきている。もちろん,ある特定の職業や学業を遂行するには,それを遂行できるだけの一定の基礎的能力が必要である。しかし,教育的観点からみれば,適性とは教育的働きかけのなかで初めて養われ,その可能性が開花してくるのである。したがって早過ぎる判断に基づく〈適性に応じた教育〉には慎重であったほうがよい。適性は,つねに教えた後に結果としてわかる部分をそこに含んでいるのである。
→職業適性
執筆者:村越 邦男
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